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さわさわと、木々のざわめきだけが静寂の中に、命の存在を伝える。 ここは珍しい。今やどこに行っても何かにつけて耳につく、あの不快な音 「ゆっくりしていってね!」 が聞こえない。 果してそうだろうか? よく耳を澄ましてごらん。虫の声も、葉の擦れる音も、静寂の中には幾つもの声がある。きっと聞こえてくるだろう。あの声も。 「・・・・・・・・・ゆっくり・・・・・・・して・・・いってね・・・・・・・・・」 ほら。かすれるように小さな声が聞こえてきた。これはどこから聞こえてくるのかな? 普通、ゆっくりは辺り構わずゆっくりゆっくり鳴き叫び、捕食種や野の獣を呼び込んでがつがつと食べられてしまう。 街中だと、下水に放り込まれたり車に轢かれたり保健所に回収されたり、野生より酷い目にあうのがほとんどだ。 でもここではゆっくりの声はとても小さい。明らかに、敵になる生き物を警戒しているのがわかる。 え?饅頭にそんな知恵があるのかって? ないよ。 ゆっくりが知恵をつけるのは、どうしても生存に必要な時だけ。大抵は食料の問題に直面したとき。 もう一つあるんだ。 それは死にたくても死ねないような拷問、いや、虐待をうけた後だ。 君もそうだからわかるだろうけど、虐待はゆっくりの扱いとしてはごくごく当たり前のものだ。 僕は研究者だから単なる快楽だけでやってるわけじゃないけど、行為自体は虐待そのものだっていうのは認めてるよ。 さておき、虐待をうけて尚、生き延びたゆっくりはどうなるか。 まぁ虐待したゆっくりをおめおめ野に放す人は少ないし、放しても傷やトラウマのせいでまず生存はできない。 鬱憤晴らしに口では言えないような虐待をしたゆっくりを放してやったら、すぐ先にある木に一直線に向かって、ものすごい速さで何度も何度も体をぶつけて自殺したって話もあるよ。 自殺なのか、もう人間から一刻も早く遠ざかりたかっただけなのか、なんにせよ精神を病んじゃったのは確かだね。 話が逸れすぎちゃったけど、つまりは虐待されたゆっくりはまず死ぬ。ってことなんだ。 でも、たまにハンディキャップを克服したり、幸運に恵まれて生き延びるゆっくりがいるんだ。 そんなゆっくりは一人じゃ生きていけない。まず生き延びること自体が誰かの助けを必要とするから。 とはいえまともなゆっくりの群れは虐待されたゆっくりを受け入れない。まぁ餡子頭だから深い意味もなく、ただ気持ち悪いとか気に入らないだけなんだろうね。 だから、被虐待ゆっくりは自分と同じような境遇のゆっくりと群れを作るのさ。 そう、それがここなんだよ。 見てごらん。 あ、そんな頭を上げないで。気づかれるよ。そうそう…茂みから覗いてみて…見えるかい? うん。洞窟があるだろう?被虐待ゆっくりの群れは崖下の洞窟、木の根元に掘り抜いた巣穴、水辺のぬかるんだ辺り、三角州… 普通の群れがあまり近づきたくないところに集まるんだ。じゃないとまともなゆっくりに見つけられたら追い出されるからね。 この群れは僕が確認したところでは、あの洞窟とすぐそばの木の何本かに巣穴を掘ってるみたいだね。 数は…生まれた子供も合わせて50くらいかな?少ない?虐待されたゆっくりのほとんどは生殖能力を失ってるからね。 あの群れで繁殖できる個体はたぶん2,3体だと見るね。 あ、でてきた…。帽子のないまりさ種だ…。うん。ここでは帽子のないゆっくりも大丈夫なんだよ。みんな似たり寄ったりだからね。 しゃべって意思疎通ができるか、髪飾りで個体が判別できるものならなんでも受け入れるみたいだね。このルールは群れごとに違うらしいけど。 次は…うお! おっと、変な声が出ちゃった…見た?あのゆっくり。そのまま、饅頭だったね。髪飾りと髪の毛を完全に取り除いたうえで、眼球もくりぬいたんだ。そのあと、小麦粉で完全に癒着させて… 無事なのは口だけか…。妖怪にそういうのいた気が。ぬっぺほっふ?だったっけ? よくあんな個体が生き延びられたな…。僕もあんなのが動いてるのははじめて見たよ。え?よくやる?ふーん。そうなんだ。 とりあえずあのゆっくりたちは巣のまわりの見回りかな?饅頭ゆっくりは多分、聴力が発達してるんだと思うよ。実験で視力を失くしたゆっくりは聴力が上がるって結果が報告されてるからね。 視力と聴力、両方で巣の安全を調べてるんだ。そうしてみるとなかなか頭のいい個体が群れを統率してるみたいだな。 ここでじっと見てるだけじゃよくわかんないんだよな。あの洞窟の中を実際に見てみないと… そう。そこで君の出番だよ。君がつくった”あれ”で監視カメラをあの洞窟の中に仕掛けるんだ。頼むよ…。 虐待お兄さんはリュックの中から一匹のうーぱっくを取り出した。これはうーぱっく型にこしらえたラジコンである。こいつの背中(?)に三種の小型カメラを搭載し、洞窟上面、左右面にカメラを仕掛けようというのである。 お兄さんはスイッチを入れ、慎重にメカうーぱっくを操縦した。ゆっくりふらふら飛んでくるうーぱっくを見てまりさが慌てて饅頭ゆっくりを引っ張って洞窟の中に逃げた。 うーぱっくはゆっくりの味方だが、他のゆっくりに自分たちの場所をむやみに知られたくないからである。 メカうーぱっくは洞窟の中に入っていく。洞窟の中ではどうやらうーぱっくに早く出て行けと警告しているようだ。お兄さんはうーぱっく視点をもとに、洞窟内にカメラを仕掛けると、ふらふらと出て行った。 よし。うまくいったね。うーぱっくは基本的にゆっくりの味方だから、あのゆっくりたちもあまり詮索しないだろう。 それじゃ場所を変えてカメラの様子を見ようか。 ところ変わってここは森に設置されたゆっくり観測所。加工所の研究の一環で建てられたもので、森のゆっくりの個体数観測や野生での成長過程などを調査している。 さぁ、テレビのスイッチをON…!映った映った。感度は良好、ゆっくりたちがばっちり見えるよ。 モニターに映っているのはじめじめとした洞窟の中で身を寄せ合い、ほとんど言葉も発しないゆっくりたち。 洞窟内のゆっくりは種別や虐待の度合いによらず、みな渾然としている。おかげでどんな個体がいるのか判別しにくい。 まずは帽子のないまりさ種がちらほら目立つ。虐待の基本だからだろう。片目のものも多い。これも基本だ。動かないのは底部を火で焙られたのが多いからだろう。 一つ一つ見てみると あるまりさは髪がざんばらだった。ゆっくりの髪は成長するが、大人になると長さが一定になり生え換わらなくなる。 このまりさはところどころハゲが目立ち、長さも不揃いだ。適当にバリカンで頭皮ごと削られたのだろう。 また、口元が大きく左右に裂けていた。笑えばハロウィンの南瓜みたいで不気味だろう。 あるちぇんは両目にピンポン玉を嵌め込まれていた。中途半端に押し込められ、小麦粉を塗って完全に癒着している。 無駄に丁寧にピンポン玉の表面には下手糞な目の絵が描かれていた。それから尻尾が20本くらいに増やされていた。 他のちぇんから引きちぎったのをぶっ刺されたのだろう。もちろん底部は焙られて真黒になっている。 あるれいむは底部に4体、ちょうど足のように赤ゆっくりが埋め込まれていた。しかも生きている。おそらく赤ゆっくりの頭部を切り飛ばし、 母親の底部をくりぬいた穴に嵌め込んだものだろう。これでは飛び跳ねることも這うこともできない。赤ん坊が成長したら子供たちが親の体を御輿のように持ち上げて移動できるかもしれないが。 あるゆっくりはもはや種別もわからない。全身を真っ青に塗りたくられてビー玉を40個くらいあちこちに埋め込まれている。意味がわからん。 髪もない、飾りもない。顔だけで判別はできないし、口もない。代わりにパイプが眉間に突き立てられている。そこから食料を入れてもらうのだろう。なんで受け入れられてるの? あるみょんの顔はいい男だった。おそらくどっかの職人が整形したのだろう。腹ん中がぱんぱんになりそうなくらいのいい男である。 眼球えぐり、底部焙り、飾り・毛髪除去、発狂(両目が左右逆の方向を向いてよだれをたらしているだけ)、合体、整形、… ここには様々な虐待を受けたゆっくりがいた。その中に、わずかにまともな姿の赤ん坊がいるが、その将来はどうなるのかわからない。他のまともなゆっくりとは一緒に生きていけないだろう。 続いていい? おはようかな?こんにちはかな?こんばんはかな? VXの人です。 観測者の立場から被虐待ゆっくりを書いてみました。虐待されたゆっくりたちは僕の夢の中にでてきたゆっくりです。 いつもこんなことを考えてます。 このSSに感想を付ける
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ゆっくりいじめ系110 髪飾りの続きです。 前の騒動の際に拾ったゆっくり霊夢。 こいつは仲間の死を見たせいか、仲間を殺してしまったせいか、ずっと固まったまま動かない。 口に物を入れれば食うし、生きてもいるようだが心が死んでしまっている。 俺自身も痛みを与えたり、髪飾りを死んだゆっくりの物交換してみたりと色々な方法を試みたが、何一つ反応を見せない。 「こうなったら代案ならぬ代餡として、中身でも入れ替えてみるか……? でもなぁ……」 それではつまらない。このゆっくり霊夢だからこそ期待できるものがあるのだ。 悩んでいても大して良い案は浮かばずに数日が過ぎた。 今日も今日とて歩きながら考えていると、道脇の草むらで何かが動いた。 「ゆぅ……くりぃ……」 ゆっくり魔理沙だった。どうやら傷ついて餡子が減っているらしく、かなり皮のたるみが目立つ。 別にどうでもいいか、と無視しようとした時、ふと妙案が思い浮かび、足をゆっくり魔理沙の前で止める。 「おい、大丈夫か? しっかりしろ!」 「ゆっ……りぃ……」 うーむ、我ながらうそ臭い演技だ。しかし、ゆっくり魔理沙の方は本当に重体らしく、返事をする元気すらない。 おそらく何らかの理由餡子を吐き出してしまったため、生きていくぶんの餡子が足りていないのだろう。 「よいしょっ、と……!」 ゆっくり魔理沙を抱え上げて、家に走り帰る。早くしなければ死んでしまうかもしれないのだ。 「待ってろ……! すぐに助けてやるからな!」 家に帰り、ゆっくり霊夢用の餡子とオレンジジュースを与えると、ようやく危機は脱したように見えた。 さっきよりも少しふくらみ、顔ツヤも良くなっている気がする。 「ありがとぅ……おにいさん……」 「無理に喋るな。とりあえず、ここでゆっくりしていけよ」 「うん、ゆっくりしていくね……」 ゆっくりぱちゅりーぐらいのか細さである。これは休ませておいた方がいい、と判断し、その日は俺も就寝した。 寝る前にゆっくり魔理沙をあえて、ゆっくり霊夢の近くに置いておいた。 次の日、ゆっくり魔理沙の様子を確認すると、本調子ではなさそうだったが、昨日よりかは随分良くなっていた。 「どうだ? 身体はもう大丈夫か?」 「ゆっくりやすめたから、すこしだいじょうぶになったよ」 やはり、答える声にはゆっくり種特有の無駄な元気さはない。もう少し置いてやるべきかな。 「ゆっ、おにいさん、あのこどうしたの?」 「ん、ああ、ゆっくり霊夢か……」 ゆっくり魔理沙は置物のように鎮座したゆっくり霊夢を気にしていた。ゆっくり同士の連帯感故だろうか。 思惑通りに事が進んでいる。俺はいくらか考えたふりをして話してやった。 「あのゆっくり霊夢は家族がみんな死んでしまって、酷い目にあったんだ。それで動かなくなっちゃったんだ……」 簡潔すぎるほど簡潔だが、ゆっくりに小難しい話をしても分からないだろう、と判断して適当にまとめた。 「……ゆっ!」 傷が癒えきっていない身体で飛び跳ね、ゆっくり霊夢の隣に行くゆっくり魔理沙。そして、いつもの言葉。 「ゆっくりしていってね!」 「………………」 相変わらず、反応しないゆっくり霊夢。……よし、実験開始。 「なあ、ちょっといいか?」 「ゆ?」 「このゆっくり霊夢を見ててやってくれないか? 食べ物はちゃんと渡すし、見てるだけでもいいんだが」 「いいよ! ゆっくりみてる!」 心なしか元気が戻ってきているように見える。やけに聞き分けがいいところにが何かありそうだ、と感じさせる。 『ゆっくり同士の交流で心は戻るか』という目論見であるが、どちらに転んでもどうでもよかった。 その日から、俺は朝食と昼食二匹分の食べ物を渡し、仕事をして、夜にまた食べ物を渡しながら一日の経過を聞くという生活になった。 ゆっくり霊夢は自分から食べようとはしないため、誰かが与えてやらなければならなかったが、それはゆっくり魔理沙がやってくれた。 ゆっくり魔理沙もゆっくり霊夢のことが気になるらしく、傍から見ていても姉のように甲斐甲斐しく世話をしている。 それが理由なのか、近頃ではゆっくり霊夢が微妙に反応を示し始めている。 小さくだが「ゅ……ゅ……」という声が聞こえるのだ。それを聞いて、ゆっくり魔理沙は嬉しそうに語りかけたりしている。 ゆっくり魔理沙は出来ないことも弁えているらしく、「れいむをあらって、すっきりさせてあげて」などと頼まれた。 ゆっくり霊夢は動かないので、ゴミや埃が積もって汚れてしまうのだ。 ついでにゆっくり魔理沙も洗ってやろうとすると、「まりさはいいよ」と拒否したので無理やり洗ってやった。 くすぐったそうにしながらも、暴れずに大人しくしているゆっくり魔理沙。 ゆっくり種としてはその聞き分けの良さ、おとなしさは奇妙というか異常であった。 俺は今までの経緯や行動から、ゆっくり魔理沙の事情をだいたい予測していた。確証を得るために語りかける。 「なあ、魔理沙。お前、仲間からいじめられたりしてたんだろ。だから、あんなに傷ついてたんじゃないか?」 「…………」 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢が乗り移ったかのように黙り込む。やがて、ゆっくりと口を開いた。 「まりさはね、ぼうし、なくしちゃったんだ……」 「そうか……」 それだけ聞けば何があったのかは予想できる。そして、現在のゆっくり魔理沙は帽子をつけている。 「他のゆっくりから取ったのか?」 ゆっくり魔理沙は一瞬迷ってから、言った。 「しらないゆっくりの、しんじゃったゆっくりのぼうし、ひろったんだ」 「知らなくて、しかも死んでるなら別にいいんじゃないか? 誰も使わないわけだし」 俺はてっきり、生きているゆっくりから帽子を奪ったから、いじめやリンチにあったんだと思っていたのだが。 むしろ、帽子やらリボンやらがないと、元いた群れであっても仲間扱いされなくなるのは前回の実験で判明したことだ。 「しんじゃったゆっくりのぼうしだとね、みんなからきらわれちゃうんだ……」 嫌われる……? どういうことだ。帽子をかぶってるのにいじめられただと? まさか、ゆっくりは分かるのか。そいつに合っていない髪飾りや、死んだゆっくりの髪飾りを使っているのが。 これは、非常に興味深い。俺はゆっくり魔理沙から当時の状況を詳しく聞くことにした。 ゆっくり魔理沙の言ったことをまとめてみると、 1、「帽子を失くす」といじめられた。群れから無視される立場となる。 2、「生きている他のゆっくりの帽子」を奪ったら、仲間として認められた。しかし、帽子を奪い返されると、以前の立場に逆戻り。 3、「死んでいるゆっくりの帽子」をかぶったら、群れの仲間どころか、行く先々のゆっくりに攻撃された。で、倒れて拾われる。 という経過らしい。 ……成る程。ゆっくり種の髪飾りにはここまで意味があるとは。驚愕の思いを隠しきれない。 そして、ゆっくり魔理沙がゆっくり霊夢を世話するのも、群れから追い出されて寂しかったからだろう。 しかし、もしもゆっくり霊夢が目を覚ましたら、どんな行動を取るのだろう。 それはそれで楽しみである。 「ゆっくりしていってね!」「ゆぅ!」 ある朝、二匹分の声で目が覚めた。まさか、と思い居間へ確認しに行くと、そこにはゆっくり魔理沙とゆっくり霊夢が仲良く並んでいた。 「おにいさん、ゆっくりおはよう!」「ゆっ!」 「……帽子、気がついてないのか?」 ゆっくり魔理沙の言うことが真実なら、ゆっくりには死んだゆっくりの帽子を判別する能力があるみたいなんだが。 「だいじょうぶだよ! ゆっくりしてるよ!」「ゆゅ!」 と、そこで気づく、家にいたゆっくり霊夢は大きさであれば、それなりに成長してる個体のはず。 しかし、先ほどからまるでほとんど喋ってしない。精々、「ゆ」の一文字文ぐらいだ。 思い浮かんだのは幼児退行という言葉。しかし、そんなのゆっくりにも起きるのか? 疑問を持ちながらも、さらなる観察を続けることにした。 「ゆっくりしていってね!」「ゆっ!」 最初に気づいたのは、このゆっくり霊夢は「ゆっくりしていってね!」と一切言わないことだった。 ゆっくり子霊夢ですら「ゆっくりちていってね!」と返事するのに、何度も呼びかけても何も返さない。キョトン、としたままだった。 ゆっくり種としての常識でもぶっ壊れてしまったのだろうか。 個の識別は出来ているようである。ゆっくり魔理沙は当然としても、俺ですら家族の一人のように反応する。 しかも、言葉の識別も出来ているらしく、「お~い」と呼ぶと普通に寄って来て、「ご飯だ」と言うとやたらと速く寄って来る。 何故だか身体能力もあがっているらしく、己の背丈を越えるほどの跳躍力を見せることもあった。 それに引っ張られるように、ゆっくり魔理沙の能力も上がってきている。単純に傷が癒えた、というだけでは説明がつかない。 傷の治りが妙に早かったり、語彙が増えたり、知能が上がっているような気配すらある。 ゆっくりとしての禁忌を破ったからなのだろうか。よく分からない。 こうなってくると、最早ゆっくりとは違う種とすべきか! と一人盛り上がってみたが、即断するにはまだ早い。 近頃では二匹が仕事を手伝ってくれるようになった。仕事といっても農作業だが。 「おんがえしだよっ!」「ゆ~!」 と言っては泥だらけになるのも構わず、文句も言わずにせっせと働いている。いや、楽だね。 今日もまたゆっくりたちが俺の手伝いをしていると、草むらから音がした。ぴょん、と飛び出る塊。 「ゆっくりしていってね!」 野生のゆっくり魔理沙であった。それだけなら別にどうということはないのだが、今はまずい。 「ゆ……!? ゆっくりしねぇ!」 「ゆぐぅ!?」 野生ゆっくりが、俺のところのゆっくり魔理沙を見た途端、人格が変わったように体当たりをしてくる。 相手が大きかったこともあり、吹っ飛ばされるゆっくり魔理沙。野生ゆっくりは攻撃の手を緩めない。 「ゆっくり! しね! しねっ! しねぇぇっ!!」 「ゆぶっ! ぎゅぶ!」 鬼のような形相で攻撃し続ける野生ゆっくりと、口から餡子が出始めているゆっくり魔理沙。 放置するのも面白いのだが、まだやってもらわねばならないことがあるので助けようとする。 と、そこへ駆けつけるゆっくり霊夢。ゆっくりとは思えない速度で野生ゆっくりにぶつかる。 「ゆーーーー!!!」 「ぐべぇ!?」 二倍近く体格差があったように見えるのだが、それを物ともせず、今度は野生ゆっくりが弾き飛ばされる。 どれほどの力が込められていたのか、野生ゆっくりは木にぶつかると、餡子を撒き散らして潰れた。 普通のゆっくりとは比べ物にならない力の強さである。普通のゆっくりだと、集団で攻撃してようやく一匹を潰せる程度の力だ。 ゆっくり霊夢は野生ゆっくりのことなど眼中になく、すぐさまゆっくり魔理沙のところに駆けつけた。 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!?」 ゆっくり霊夢が悲痛な叫び声を上げる。何事か、と見てみれば、ゆっくり魔理沙の皮が破れて餡子が飛び出していた。 どうやら、吹っ飛ばされた時に木の枝にひっかけてしまったらしい。 「ちっ……まずいな。大丈夫か?」 「ゆぅぅ……」 だらり、と返事も出来ずにへたりこんでいるゆっくり魔理沙。そこまで、餡子の流出が大きいのかとも思ったが、何か違う。 身体がぶるぶると震るわせ、悪夢にうなされているように「ゆっ、ゆっ、ゆっ」と呻いている。 とりあえず、症状を観察するのは後回しにしてゆっくり魔理沙を家の中に運び込むことにした。 一応の手当ては終了した。傷口にテープを貼り、オレンジシュースを飲ませておく程度のものであったが、応急処置にはなる。 状態が良くなったわけではないが、傷よりも精神的に弱っているようだった。 「みつかった……みつかっちゃたよぅ……」 涙を流すわけでもなく、生気の抜け落ちた顔でぶつぶつと呟き続けている。 ゆっくり種の禁忌を犯しているゆっくり魔理沙は、制裁を恐れているのだろう。 「大丈夫だって。襲ってきたやつは潰しただろ? もう来ないんじゃないか?」 「そうかな……?」 怯え切った顔つきだ。俺としてもゆっくり種にそこまでの探知能力はないと思う。第一発見者がいなければ犯罪は露呈しない。 「もう、ゆっくりできないできないよぅ……」 なおも呟き続けるゆっくり魔理沙。どうしたものかな、と思った時、 「ゆぅ、ゆっ、ゆ、ゆっくり、しない、でね!」 なんとゆっくり霊夢が喋り始めた。ぴょんぴょん、と跳ねながら、頑張って話そうとしている。 「ゆっくり、しなくても、だいじょうぶ、だよ? おかー、さんは、れいむが、まもるよ!」 たどたどしく、けれど、はっきりと宣言した。 母親と認識していたことにも驚きだが、「ゆっくりしなくていい」とはゆっくり種としての存在意義に関わるのではないだろうか。 「さっきのは、ちがう、ひと。れーむたち、とは、なんかちがうの」 どうやらゆっくり霊夢は明確な境目を他のゆっくりに感じているらしい。 これは……面白い。その背中を押してみるべきだろう。 「そうだ、違うぞ。。あいつらはお前たちみたいなのが嫌いなんだよ」 「? どーして?」 「お前たちの髪飾り、リボンや帽子は死んだゆっくりのものでな。普通のゆっくりはそういうのを許さないらしい」 「だから、おかーさんを、いじめたの?」 「そうだ」 簡潔に伝えてみると、ゆっくり霊夢は身体をぶるぶると震わせ始めた。 怒りの感情かもしれないが、そこには何かしらの決意みたいなものが感じられた。 「じゃ、れーむは、ゆっくりじゃなくていい! そんなこというひと、みんなおいはらうよ!」 「へぇ……」 そっちの方向へ行くのか、と俺は感心していた。種であることよりも親を守る。 もしかすると、自分が既にゆっくり種から受け入れられないと分かっているのかもしれない。 「お前はもうゆっくりしないのか?」 「しないよっ!」 「じゃあ、お前は今度から『ゆっくりまんじゅう』っていう名前にしてみたらどうだ? ゆっくりとは違うってことで」 「ゆっ!? ゆっくりまんじゅう! れーむはゆっくりまんじゅうだよ!」 思いのほかあっさり承諾した。むしろ、喜んでいる。俺としては、人づてに聞いた小噺から思いついたものなんだが。 これで、本当にゆっくりとは違うものになったんだろうか、明日はどうしてみようか。 そんなことをワクワク考えながら、俺たちは眠りについた。 夜中。声と気配で目を覚ます。ゆっくりまんじゅうたちのいる部屋からしているようだ。 「なんだ……まさか!?」 急いで、居間に繋がっている扉を開けようとする。が、何かにつっかえているらしく、僅かの隙間しかできない。 その隙間から声が聞こえてきた。 「おかーさん! おかーさん! やめぐっ!?」 「ゆ、ゆゆ……」 「ゆっくりしないでね!」「ゆっくりできないよ!」「すっきりさせてね!」 まんじゅうゆっくりたちとは別の無数の声。俺は事態を察して、扉からではなく、窓から外に出て、玄関へと向かった。 「うわっ……」 表から見ると、玄関は開け放たれており、何匹ものゆっくりが部屋に入ろうとしていた。 しかし、既に入っているやつが多すぎて入れていない。それでも、まだ部屋の中に入ろうとしている。 「邪魔だ! どけっ!」 玄関周辺のゆっくりを潰して道を作る。ようやく、部屋の中を見るとそこには床一面にゆっくりが蔓延っていた。 「ゆっくり!」「ゆっくりできないやつはしね!」「じゃまなひとはどっかいってね!」 どうやら、俺には全く感心を抱いていないようだ。ゆっくりまんじゅうたちを目で探してみると、 「ゆぅ! ゆっ!? ゆぅぅぅぅぅ!!」 多くのゆっくりに圧し掛かられているまんじゅう霊夢がいた。 力で押し返そうとしているが多勢に無勢。潰されてはいないが、完全に身動きを封じられていた 「おかーさん! おかぁ、さん!」 その声で今度はまんじゅう魔理沙を探すと、テーブルの上で何匹かゆっくりがまとまっていた。 まさか、とテーブルに手を伸ばすが、玄関からでは遠く、突っ込むにはゆっくり達で動けない。 「ゆ、ゆ……ゆ。ごめんね、ごめんね……」 テーブルでは魔理沙が頭から食べられていた。何度も謝罪の言葉を呟きながら。誰に向かって謝っているのだろう。 「ゆっ、ゆっ! あのひとたち、へんなゆっきゅだよ! しんじゃえばいいのに!」 「みたよ、おひるにここのおうちでゆっくりしてたよ! ゆっくりじゃないのになまいきだよ!」 他のゆっくりよりも嬉々として、ゆっくりまんじゅうたちに攻撃を加えている二匹のゆっくり魔理沙。 あれは、もしかして昼間の野生ゆっくりの家族だろうか。現場を見られていて、仲間に場所を伝えたというわけか。 第一発見者がいなくても、第二発見者がいれば犯罪は露呈するか。くそ、あの後、周辺を警戒しとくんだったな。 「れーむもおかーさんも、だれにもめーわくかけてない! やめて、やぶぎゅ!?」」 動き回ってゆっくりたちを引き剥がそうとするが、さらに多くのゆっくりに圧し掛かられて、餡子が出そうになる。 「ゆっ、くりぃぃぃぃ!!」 その光景を見た魔理沙は最後の力を振り絞って、もう半分以上、無くなっている身体で飛んだ。我が子を守るため。 霊夢の近くに落ちる魔理沙。その衝撃と気迫に驚いて、群がっていたゆっくりたちはわらわらと散っていく。 「おかー、さん? おかーさん!? おがーざぁん!?」 「ごめんね……ごめんね……」 「 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」 最後まで謝りながら息絶えていく魔理沙。泣きすがる霊夢。 「ようやくしんだの? ばかなの?」「あとひとつ、つぶせばゆっくりできるね!」「すっきりしようね!」 口々に汚く罵るゆっくりたち。流石に見ていて腹が立った。俺がやってみたかったのに。 先ほどの、場所を教えたゆっくり魔理沙がまんじゅうへと寄ってくる。 「ゆっくりたべるよ! どいてね!」 餡子を食う気だろう。完全に余裕の笑みを浮かべている。 「おいしそう~♪ あ~ぐぎゃ!?」 ゆっくり魔理沙は食べようとして突如、吹き飛ばされた。壁にぶち当たって、中身が飛び散る 「ゆっくり!? ど、どうしたのぉ!?」「ゆっくりしんじゃったよ!」 「ゆっくり……」 ゆっくりたちが声した方を見る。ゆっくりたちの認識において、そこには潰され、食べられる予定の獲物しかいないはずだった。 「ゆ、ゆ!?」「ゆゆゆ!?」「ゆぅ!?」 「ゆっくり、するなぁぁぁぁっ!!!」 そこにいたのは狩人だった。否、狩人という言葉すら生ぬるい。それは戦士だった。 周囲のゆっくりを比較にならない力と素早さによる体当たりで叩き潰すまんじゅう。その凄まじい勢いにゆっくりたちは恐慌を来たす。 「い゛や゛ぁ゛ぁぁ!?」「おうぢがえる! おうぢにがえりだいよぉ!」「だじでぇぇっ!!!」 先を争って俺の方、すなわち玄関へとへ向かおうとするが、数が多いのが災いして思うように動けない。 その様子を見てから、俺はまんじゅうに声をかけた。 「おい、まんじゅう。一人で出来るか?」 「ひとりで……ひとりでできる! まかせて! みんな、ゆっくりできなくさせるよ!」 「だ、そうだ。お前ら、全員そこの『まんじゅう』にやられちまえよ」 指でまんじゅうを指し示してやってから、ゆっくりと玄関の扉を閉める。外にいたゆっくりもついでに放り込んでおく。 俺自身もイラついていたのだ。気分的には収穫しようとした果実を目の前で掻っ攫われた気分に似ている。 中の様子を窓から見てみる。 多数のゆっくりが外に出ようと扉に張り付いているが、結局開かず、後ろから来た他のゆっくりに潰されている。 「だぢでぇぇ!! ごごがらだじでぇ!」「 ゆ゛っぐり、じだいよおおおお!」「まんじゅういやぁぁ!!」 皆が逃げようとすればするほど、潰されていくゆっくりたち。しかし、後ろから今だ危機が迫っているのだ。 「ゆっ、くりぃ!」 まんじゅうは上空から勢いをつけて、一匹のゆっくりを叩き潰す。広がる餡子。見せつけるようにまんじゅうはそれを食べた。 「むしゃり! むしゃり! ぺっ!」 リボンを吐き出す。さらに震え上がるゆっくりたち。 髪飾りを盗った許せないゆっくりがいると知って群れで潰しに来たはずなのに。しかし、現実は過酷だった。 「どうじでぇ!? どうじでこうなるのぉ!?」「ゆっぐりざぜでね!?」「「まんじゅうはこないでぇぇぇぇ!」 「どうして? ゆっくりたちがれーむの、ゆっくりまんじゅうのおかーさんをころしたからだ!!」 今更、たわ言を抜かしていたゆっくり魔理沙を潰す。それは母に似ていても、決定的に母ではなかった。 「まんじゅう!?」「まんじゅうごわ゛い゛!」「ま゛んじゅう゛、やべでぇ!」 「ぼうしやリボンをなくしたゆっくりは、まんじゅうになってイジメられるんだ! おぼえとけ!」 「お゛ぼえ゛る゛! お゛ぼえ゛る゛がら゛だずげでぇぇ!」「ゆっぐいじだがっだよ゛う゛!」 「じにたくないよ゛おお゛お゛お゛お゛お゛!」「ぎゅっぐりぃ!!」「おがあざぁん!」 まんじゅうは飛び上がって、扉に群がっているゆっくりに思い切り体当たりをぶちかます。その勢いで扉が開け放たれた。 既に大半のゆっくりはやられていたが、それでも残ったゆっくりが我先にと逃げ出していく。当然、仲間に潰されたゆっくりもいた。 「まんじゅう゛ごわい! ま゛ん゛じゅうごわいよぉ!」「ま゛んじゅうなりだぐな゛いぃぃぃ!!」 「ずっぎりじだがっだだげなのにー!!」「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!???」 それぞれがまんじゅうに対して恐怖を口にしながら、どこかへ行った。 「いいのか、そこそこの数を逃がしたけど」 まんじゅうの狙いは分かっていたが、あえて聞いてみる。 「いいよ。あれで、まんじゅうがこわいっておもってくれれば、いいんだよ」 やはり計算してやっていたか、と少し感心していると、まんじゅうが俺の方を向いて小さくお辞儀をした。 「なんだ、どうした?」 「おとーさん、いままでそだててくれて、ありがとう。ここにいると、ゆっくりがいっぱいきて、めーわくがかかるからどこかにいくね」 「何……?」 俺ってお父さん扱いだったのか、と思いながら、なんとなくある推論が思い浮かんだ。 このゆっくり霊夢、もといゆっくりまんじゅう霊夢は、本当にゆっくり種とは違うものに変質しまったのではないだろうか。 きっかけは先日の惨劇であり、髪飾りを変えたことかもしれない。 しかし、俺や元ゆっくり魔理沙と暮らすことでゆっくりとしての常識を失っていったのかもしれない。 あの身体能力はそんな中でも生き残るために発揮されている、所謂「火事場の馬鹿力」だろうか。 そうだとすると、その寿命は長くは保てないだろう。 これはこれで興味深い事例であった。 俺はまんじゅうに、餞別として潰れたばかりの餡子を包んでくれてやった。 面白いものを見せてくれた礼でもある。 「元気で、とは言えないが、まあなるべく死ぬなよ?」 「うん。おとーさん、おかーさんのぶんまでしなないよ。ばいばい」 どこか穏やかな顔つきでまんじゅうは、消えていった。 その後、やけに強いゆっくりとして、まんじゅうの存在はたまに人々の噂にされることもあったが、死んだかどうかは分からない。 普通に考えて、いくらまんじゅうでも敵の数が多いと生き残れないのではないか、と思う。 それでも、時折だが山からある叫び声が聞こえるそうだ。そう、 「ま゛ん゛じゅ゛う゛ごわ゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛っ!!??」 と。 ここらで一つ、後書きっぽいものをどうぞ。 ゆっくりに「まんじゅうこわい」と言わせたかった結果がこの長文だよ! 「髪飾りの失くしたゆっくり」だと長いので適当に名前をつけてみたら、「まんじゅう」になった。反省している。 「ゆっくりまんじゅう」を正式名称にしたのは、流石に「ゆっくり」って言葉がついていないとマズイだろ、という判断から。 地の文で書く時、または他のゆっくりが呼ぶ時には「まんじゅう」になります。「饅頭」に非ず。 「まんじゅう」の脳内設定も一応書いておきます。使っても使わなくても、どっちでも構いません。 名称だけ使うとかも大丈夫です。設定改変もご自由に。 ……そもそも、こんな設定を使ってくれる人がいないだろうけど。 「ゆっくりまんじゅう」 髪飾りを失くしたゆっくりのこと。 髪飾りが無くなったゆっくりは種として迫害される運命にある。特に仲間の死体から髪飾りを盗んだ者は絶対に許されない。 「ゆっくりまんじゅう」は、それでも生き残るために変化した突然変異型ゆっくり。 髪飾りを失くしただけでは変異しないが、他のゆっくりったいによって迫害されることで変異することがある。 身体能力や知能は通常のゆっくりを遥かに凌駕するが、それは体内餡子の糖分を使っているため。 故に、通常のゆっくりよりも寿命は短く、中の餡子も甘みがなくて不味い。 「ゆっくりするな!」などの「ゆっくり」という言葉に対して否定的な言葉をぶつける。 自分から他のゆっくりを襲うことはしないが、襲われたら相手がれみりゃであろうと、群れであろうと死ぬまで戦う。 子ゆっくりであろうと容赦せず、相手の餡子を食らうことも平気でする。
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注意 自分設定があります。 赤ゆっくりがでてきます。 すっきりできないまま、終わるかもしれません。 「「「ゆっきゅりちていってね!」」」 「「「ゆっくりしていってね!」」」 ここはとあるゆっくりの群れ。 たった今、生まれたばかりのゆっくりが目をキラキラを輝かせながら親たちに向かって、お決まりの挨拶をする。 親たちもまた、お決まりの挨拶を返し、その後は頬を擦り合わせて親愛の情を示すのだ。 平凡かもしれないが、とてもゆっくりした親子たちであった。 子供たちは初めて見る『おそと』に興味津々であった。 あるもの全てがとても綺麗なものとして感じられる。 木々の緑、風の流れ、太陽の暖かな光、どれもこれも当たり前のものだが、全て素晴らしいものとして感じている。 この時の感情をゆっくり風に言い表すならば、『とってもゆっくりしている』であろう。 大人になってからでは目を向けないものだが、生まれたてのゆっくりだからこそ分かるのだ。 やがて子供たちは自分を生んでくれた親の元へと集まり、家族であることを確認する。 彼らはとても、とてもゆっくりしていた。 「へぇ、いっぱいゆっくりがいるなぁ」 「ゆっ!?」 人間の、どこか呑気そうな声が聞こえてきた。 ゆっくりは慌てて周囲を確認する。ゆっくりにとって、人間とは『ゆっくりできないもの』として分類されているからだ。 すぐさま、一匹のゆっくりが茂みから顔だけ覗かせている人間を見つける。 それは若い男であった。大きなリュックを背負って、物珍しそうにゆっくりたちを眺めている。 いきなり襲って来ないことに安堵したのか、ゆっくりたちはその場に留まって人間を威嚇する。 「ゆうぅぅぅ! にんげんさんはあっちにいってね! ここはれいむたちのゆっくりぷれいすだよ!」 ぷくぅ、とゆっくりれいむは頬を膨らませて、身体を大きく見せる。 この動作は他の動物に対しても威嚇の効果はあまり持たないが、ゆっくり的には真剣である。 本気で相手を驚かせられると思っているのだ。 勿論、人間相手ではまったく威嚇の効果は見込めないが。 「いやいや、ごめんごめん。ゆっくりできないことはしないから、安心してくれよ」 笑顔のまま、男は両手を挙げて敵意の無いことを示す。 それでも、ゆっくりたちの威嚇の構えが解けないので、背中のリュックからあるものを取り出した。 「それじゃ、お近づきのしるしということで、これをあげるね」 それは山の中で採っていたキノコであった。 ここで、ゆっくりに人間の食べ物を渡すほど、男は知識不足なわけでもない。 人間の食べ物に舌が慣れてしまったら、大抵はろくなことにならないからだ。 「ゆゆゆ!? きのこさんだね! みんなはちょっとまってね!」 集団の中心ゆっくりと思しきゆっくりれいむが、まずは毒見をしてみる。先ほどの頬を膨らませたゆっくりれいむである。 むーしゃむーしゃ、と食べてみても、おいしいだけで毒はないようだ。 「きのこさん、おいしいよ! もっとちょうだいね!」 「はい、どうぞ」 ゆっくりにも食べやすいように、ある程度ばらばらにして地面にばらまく。 親ゆっくりたちはわっ、とそのキノコに群がって食べ始める。 出産直後であったために、とてもお腹が空いていたのだ。 「うめぇ! まじうめぇ!」「まじぱねぇ!」 「むーしゃ、むーしゃ! しあわせー!」 凄まじい勢いでキノコを食べていくゆっくりたち。その様子を男は笑顔で眺めている。 一方、子供のゆっくりらはまだキノコのような固形物を食べることはできないため、食べ終わるまで待たされている。 子供であるため、食べ物という概念を完全には理解できていないが、おいしそうであることはなんとなく分かる。 いいなー、というような視線で親達を眺めている。 男はそれを不憫に思ったのか、そちらへと話しかけた。 「君たちは可愛い赤ゆっくりだね。お持ち帰りをしたいくらいだよ!」 突然、人間に話しかけられた子供たちは「ゆゆ!?」と驚いて親たちの背中に隠れる 親れいむの方もぶくーっと膨らんで、再度の威嚇行動を取る。 「れいむのかわいいあかちゃんをもっていかないでね! ぷんぷん!」 「おかーしゃーん、がんばれー!」 「本当に持って行くつもりはないよ? そのぐらい、赤ゆっくりが可愛いってことさ!」 男の言葉に少しは気を許したのか、親れいむはぷひゅるる~、と頬から空気を抜く。 勿論、それにつけこんだ催促も忘れない。 「ゆっ! いくられいむのあかちゃんにめろめろになったからって、へんなこといわないでね! あと、きのこさんをもっとちょうだいね!」 随分と偉そうではあるが、親れいむは他の者を相手にする時、『下手に出たら負け』と思っている。 常に堂々としていることで、相手を圧倒しようというわけだ。これは同じゆっくり相手には通じる場合もある方法である。 場合によっては野生動物にも効くかもしれない。声に驚くこともあるからだ。 勿論、人間にはまったく効果はないが、男には人語を解してる、と感じられてむしろ好意的にすら思っていた。 男は普通の『良い人』であり、極端な嗜好の持ち主ではない。 ゆっくりによってもたらされた被害に眉をひそめることはあっても、潰そうとは思わない性格であった。 はいはい、と頷くと、男は再びきのこをばらまく。 ゆっくりたちもこの人間は敵ではない、と判断したのか、きのこを食べながら思い思いにゆっくりし始めた。 しばらくの間、男は触れるでもなく、ただひたすらに子供のゆっくりを眺めているだけであった 「いや、ホントに可愛いな~赤ゆっくりは」 ニコニコと満面の笑みを浮かべながら、何度目かになるその台詞を言う。 そこで、ようやくゆっくりたちは疑問を持った。 「ゆ? あかゆっくりってなに? れいむのあかちゃんはれいむだよ!」 親れいむがややこしいことを言う。 ちなみに、ゆっくりに個体名というのは存在しない。あるのは『れいむ』や『まりさ』などといった種族名のみである。 それでは相手のことを呼び合えずに不便に思われるかもしれないが、ゆっくりは飾りによって相手を識別している。 どんなに美しいとされるゆっくりでも飾りがなければ、ゆっくりできないゆっくりと思われる。 家族であっても、飾りのないゆっくりは排斥しようとするのだ。 飾りは取れやすい、という欠点はあるが、相手を識別するのに最も必要なものである。 加えて、ゆっくりは親しい相手のことは微妙なニュアンスで呼び分けてもいるらしい。 余談ではあるが、人間がそれぞれ違う名前を持っている、というのはゆっくりにはよく理解できないことなのだ。 だから、人間を『にんげんさん』や『おにいさん』などといって一括りにしようとする。 もしかすると、人間には飾りがないのでゆっくりしていないと思っている可能性もある。 飾りがないゆっくりとは、人間で言えば名前のない人間と例えれば、少しは理解できるかもしれない。 「ああ、赤ゆっくりっていうのはね、赤ちゃんのゆっくりのことだよ。 可愛い赤ちゃんの赤を取って、赤ゆっくり」 男は親れいむを見ながら、丁寧に説明する。 その説明に親れいむも納得の表情を浮かべて頷く。 「ゆ! あかちゃんのことだったんだね! そうだよ! れいむのあかちゃんはかわいいもんね!」 元々、大きかった声をさらに張り上げて親れいむは胸、もとい顎を張る。 男は頬を綻ばせながら、ゆっくりの様子を見ている。 「皆が『れいむ』じゃ、ちょっと呼びにくいもんね。赤ちゃんのことぐらいはそう呼んでみたいんだよ」 男は人間なので、ゆっくりの区別は大きさの大小などでしか区別ができないため、一つそんな提案をしてみる。 親れいむはというと、その提案に乗り気であった。 「ゆゆゆ! おにいさん、あたまいいね! ゆっくりよんでいいよ!」 男は褒められはしたが、流石に苦笑いで返す。 しかし、許可は出たので思う存分、呼ぶこととした。 「それじゃ、赤ゆっくり可愛いな~。ウチでも飼いたいなぁ。でもなぁ……」 わずかに陰鬱な表情になりながらも、触れずに愛でる男。 猫好きなのに猫アレルギー持ちのような可愛がり方である。 親れいむはそんな男の様子を見ていて、なんとなくうずうずし始めていた。 先ほどから男の言葉が気になって仕方ないのだ。 赤ゆっくり。赤ちゃんを指し示す言葉である上に、ゆっくりという言葉が入っていれば気にならないわけがない。 つまるところ、自分も言ってみたいのだ。 「ゆっ、ゆっ! おにいさんだけにはあかちゃんをまかせておけないよ! れいむもよぶよ!」 すぐに我慢の限界が訪れ、よく分からない論理を展開しながらも親れいむが自分の子供に近寄る。 「ゆ~♪ れいむのあかゆっくり~♪ とってもかわいいんだよ~♪」 「「「ゆ~」」」 赤ちゃんゆっくりとは親れいむなりのアレンジだろうか。 子守唄のようなものを歌いながら、己の子供を頬ずりをする親れいむ。 頬ずりをされている赤ゆっくりはなんだか妙な表情をしている。親が重いのかもしれない。 そして、周囲にいたゆっくりもその光景を見て、ゆっくりしたくなってきた。 「ゆっ、ゆっ! まりさのあかゆっくりもゆっくりするよ!」 「あかゆっくりちゃんって、とってもとかいてきなかんじね!」 「ゆ! あかちゃんゆっくりかわいいな~♪」 などと、自分の子供とゆっくりし始めた。 各々がゆっくりしている状況を見て、男はゆっくりしているのを邪魔していけない、と感じた。 人間がゆっくりと関わっても、ゆっくり側に良いことはあまり起きないからだ。 そういう意味で男は少し関わりすぎた。 「それじゃ、僕はここで失礼するよ。後は皆でゆっくりしていってね!」 「「「「ゆっくりしていってね!」」」」 こうして、男とゆっくりたちは別れた。 できればもう一度会いたいな、などと考えながら、男は家路に着いたのであった。 男と出会ってから一週間程が過ぎた。 その間、親れいむたちは酷い目に会うこともなく、毎日を過ごしていた。 食べ物がちょっと少なかったり、木にぶつかったりなど、些細な不幸はある。 しかし、それを補って余りあるほど自分の赤ゆっくりは可愛いし、皆と一緒にいられるのもとても幸せである。 みんなゆっくりしている、はずであった。 なんだかあかちゃんゆっくりのようすがへんだ、と何となく親れいむは思っていた。 言葉ではうまく説明できないが、妙な違和感を親れいむは持っていた。 赤れいむに元気がないわけではない。むしろ、普通に甘えてきたりもする。 呼べば返事もちゃんとする。多少の偏食はあっても、さして重要視すべきことでもない。 だが、何か変だった。 「ゆ~? よくわからないよ? でも、ゆっくりできないからいいや!」 親れいむは考えることを放棄した。元来、ゆっくりとは考えることを常とするモノではない。 刹那的に日々を過ごしていく奇怪な動く饅頭である。 ともあれ、親れいむは先ほどまでの考えをすっかり忘れて、我が子に頬ずりをする。 「す~り、す~り♪ れいむのあかゆっくり、ゆっくりしていってね~♪」 「ゆっきゅり~♪」 赤ゆっくりもそれに応じて、頬ずりをする。とても仲が良い関係であった。 さらに幾日か過ぎた。 何度かの不幸はあったが、親れいむたちはゆっくりしている。 しかし、なんとなく違和感が残ったままであった。 「「ゆっくりしていってね!」」 仲間同士で言い合う中でも、何か釈然としないものがあった。 誰もがなんとはなしに分かっているはずなのに、分からない。 そんな状態が長く続き、親たちはどこかゆっくりできなかった。 そんな中でも赤ゆっくりたちはいつもどおりにゆっくりしていたが。 ある日、親れいむは仲の良いゆっくりまりさに思い切って相談してみることにした。 自分の考えすぎかもしれないが、ずっと心の底からゆっくりできていないのだ。 これではストレスが溜まって仕方ない。 親れいむは親まりさを人気ならぬゆっくり気のない場所に呼び出して、問いかけた 「ゆぅ……まりさはゆっくりできてる?」 「ゆっくり、できてるよ! どうしてそんなこときくの?」 「ゆっ……!」 まりさの言葉の間、『ゆっくり』の部分にわずかな躊躇いがあることを親れいむは見逃さなかった。 もしかするとまりさもゆっくりできていないのではないか、と親れいむは感じたのだ。 「まりさ、ほんとうにゆっくりできてる?」 「ゆ……ゆっくりできてるよ?」 「ほんとうに?」 「ゆ、ゆぅ……」 親れいむに何度も問いかけられることによって、まりさも徐々にゆっくりできなくなっていく。 心の中にあったわずかな疑念が段々と大きくなっていくのが分かる。 「……まりさも、すこしゆっくりできてないよ……」 注意して見れば、まりさの身体は葉っぱなどによってできた擦り傷がいくつかある。 親れいむにもあるが、自分の赤ゆっくりのために食べ物を取って来る時にできた傷である。 子育てとは大変なものである。 だが、ゆっくりできない問題とはまさしくそこにあった。 「まりさのあかゆっくりが、へんなんだよ……」 まりさが沈痛な面持ちで語りだす。 そこには隠し切れない苛立ちも含まれていた。 「もうずっと、ごはんをあげてるのにぜんぜんゆっくりしてないんだよ…… まりさががんばってるのに、ぜんぜんてつだってくれないし、もっと、ちゃんとしてほしいよ……」 まりさが愚痴を言うように呟き続ける。 親れいむにはまりさの辛い気持ちはよく伝わったが、何が起こっているのかはよく分かっていなかった。 出した結論は、 「やっぱり、まりさもゆっくりできてないんだね!」 だった。原因は未だ不明だが、その推測は当たっていた。 そして、このゆっくりできない状態は群れ全体へと波及していくのであった。 さらに数日。そこで繰り広げられている光景は酷いものであった。 「ゆっくりできないあかゆっくりは、どっかいってね!」 「「まま~! どおぢでそんにゃこどいうの~!?」」 「こんなあかゆっくりちゃんはとかいはじゃないわ!」 「「ときゃいはってな~に?」」 「あかちゃんゆっくりなんて、もういらないよ!」 「「おかーしゃーん!?」」 親であったはずのゆっくりたちが己の子を罵っている姿がそこにはあった。 その中には、あの親れいむの姿もある。 「どおして、れいむのあかゆっくりはおおきくならないのぉぉぉおお!?」 「「「おか~しゃん、おこらないでね!? おこらないでね!?」」」 親から受ける圧力に、赤ゆっくりはとてもゆっくりできていなかった。 どうして親たちが怒っているのかも理解できない。 しかし、言われも無い迫害を受けているとは言いがたい状態でもあった。 親れいむの言葉は真実である。 赤ゆっくりたちは男と会った時と比べても、ほとんど成長していないのだ。 いや、全く成長していないと言い切ってしまってもいいかもしれない。 「ほんとうに、れいむのあかゆっくりはじゃまだよ! ゆっくりできないよ!」 「「「どうちてしょんなこというのぉぉぉぉぉ!!??」」」 親れいむは可愛がっていたことも忘れて、赤ゆっくりを罵る。 赤ゆっくりが生まれてから、ずっと食べ物を与え続けているにも関わらず、まったく大きくならない。 それが、親れいむには不気味に映り、またゆっくりできないように思えたのだ。 赤ゆっくりは赤ん坊であるために食べ物を自力で食べられず、親が噛み砕いたものなどを食べる。 一般に言われている限りでは数週間もあれば、赤ゆっくりから子ゆっくりへと成長する。 子ゆっくりともなれば、親が噛み砕いたものを食べる必要はなく、それなりに固形物を食べられるようにもなる。 また、身体にも弾力性が出てきて、赤ゆっくりと比べてはるかに死ににくくなる。 赤ゆっくりを育てるというのは神経を使うものなのだ。 それが一向に成長しないともなれば、余計にイラつくのも無理はない。 「もうへんなあかゆっくりなんてそだてないよ! さっさときえてね!」 「「「おか~しゃ~~ん!!!」」」 親れいむの最後通牒によって、親子間に決定的な溝ができた。 かえってきて、と泣く子を無視して、れいむは自分の食べ物を探しに行く。 見れば、周囲の親ゆっくりたちも一様に我が子を見捨てて、思い思いに行動し始めている。 「ゆ~♪ これでようやくゆっくりできるよ! ゆ~♪ ゆ~♪」 れいむは意気揚々と跳ねていく。 その頭の中は己の願望で一杯であった。 「まずはあたらしいおうちをみつけないとね! れいむのかわいいかわいいあかゆっくりがいっぱいほしいよ! ちゃんとおおきくなるあかゆっくりがほしいね!」 この家族は何か特別なゆっくりではなかった。そこらに存在している一般的なゆっくりでしかない。 それは群れのゆっくりも同じである。では、何故今回のようなことが起こったのか。 それは、『あかゆっくり』という言葉によるものであった。 群れの子供たちは己の名前ではなく、明らかに『あかゆっくり』などと呼ばれることが多かった。 本来、ゆっくりは人間が気づき得ない微妙なニュアンスの差異で他の個体を呼び分けている。 それによって、己の自我を確立し、他の個体とはわずかに違った精神構造を持つ。 それが『あかゆっくり』と一括りにされることで乱れてしまったのだ。 最初に自我を確立させるべき相手から、名前を呼ばれないことで奇妙な変化が起こっていた。 子供たちは自分のことを『あかゆっくり』であると思い込み、そうであろうとする意思が働いていた。 『あかゆっくり』であるから、大きくならない 『あかゆっくり』であるから、固形物を食べられない。 『あかゆっくり』であるから、身体が柔らかい。 『あかゆっくり』であるから、うまく喋れない。 『あかゆっくり』であるから、ものが良く分からない。 『あかゆっくり』であるから、『あかゆっくり』でなくてはいけないのだ。 つまり、『あかゆっくり』と呼ばれ続けることで精神と身体が赤ゆっくりの状態で固定されているのだ。 餡子の遺伝によって、親が思う『あかゆっくりとはこうあるべき』という形が子にまで伝わっていたのだ。 この状態は自分の子供を『あかゆっくり』と呼び続ける限り、変わらないのだろう けれども、れいむたちは今後もそう呼び続ける。 「れいむのあかゆっくり」と括ることで、通常よりも「この子供は自分のモノである」と印象付けることが可能だからだ。 何に印象付けるのか。勿論、自分と周囲に対してである。 いわば、自分が如何にゆっくりしているのかを証明するアイテムが『あかゆっくり』となっているのだ。 恐らく、ゆっくりたちは何故自分たちが子供のことを『あかゆっくり』と呼びたいのかは理解してはいないだろう。 そう呼んだらゆっくりできる気がする、そんな程度の理由しか思っていないのかもしれない。 ゆっくりたちは、どの個体も皆ゆっくりしていたい。 自分がどれくらいゆっくりできているかの指標として、『あかゆっくり』が必要とされたのだ。 『自分はこんなにもゆっくりしているものを持っている。だから、自分はとてもゆっくりしているのだ』 要約すれば、こういう理屈になるはずであった。 しかし、現実に赤ゆっくりは生きている。 れいむはその弱々しい個体を生かし続けるのが苦痛となったために捨ててしまったのだ。 赤ゆっくりがいる家族は、見た目とは裏腹にゆっくりできることが少ないからだ。 れいむはこれからもさらなるゆっくりを得るために、『あかゆっくり』を産んでは捨てていくのだろう。 多分、死ぬまで。 「ゆっくりしていってね! れいむのあかゆっくり!」 「ゆっきゅりしていってね!」 書いた人 ゆっくりまんじゅうの人
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うどんげファーストミッションPart2 「ふぅ・・・」 結局鈴仙も行き詰まっていた。しかし、師匠から引き受けた以上、早々に諦める訳にはいかない。 それがますます鈴仙を悩ますことになった。 「精神に影響を与える、か・・・」 戸の開く音がする。永琳が様子を見に来たようだ。 「どう?何とかなりそう?」 無言を答えにする。 「難航してるようね・・・ゆっくりは人間に割と近いと思うわ。 人語を話すから考えてることもわかりやすいし。最も知能は犬以下だけど。 人間と同じように考えてみたらどうかしら?」 鈴仙の頭にある考えが浮かんだ。 「ゆっくりは餡子が脳の働きをしているんですよね!?」 「ええ、そうよ。餡子の移植実験なんてのもやってみたわよね」 突然勢いづいた鈴仙に若干気圧されたような永琳。 「良いアイデアが浮かびました!師匠!ありがとうございました!!」 そのまま鈴仙はゆっくりを捕まえに外に駆け出して行った。 「がんばってねー!」(適当なこと言って諦めさせようと思ったのに・・・まあいっか) そんなこととはつゆ知らず鈴仙はきっと師匠は答えがわかっていて自分を誘導してくれたのだと信じていた。 「おらっしゃあゆっくりゲッチュウ!!」「ゆうううう!?」 妙に張り切っているうどんげは早速ゆっくりれいむの成体を一匹捕獲してきた。 実験にはれいむを使うことに決めた。れいむが一番扱いやすく単純だからと言うのが一番の理由だ。 「さあこの中でせいぜいゆっくりしてね!!」「ぐぎゅっ!!」 透明な箱のなかにれいむを押し込む。おなじみの箱かと思いきや、その箱は上の部分に蓋が付いていなかった。 「実験開始よ!!」(ドォォォォン!!)「な"に"ずる"の"お"お"お"!?」 れいむの悲鳴をBGMに妙なポーズを決めるうどんげ。その手には数本の針が握られていた。 針と言っても霊夢(否ゆっくり)が武器とするような物騒な物ではなく、針治療に使うような物である。 「さて問題です」「ゆ!?」「私はこの針で今から何をするでしょう!?」「ゆゆ!?いたいのはいやだよ!!ゆっくりやめておうちにかえしてね!!」 「甘ったれるなこのど腐れ饅頭がァーーーーーッ!!」「ゆ”っ!?」 れいむの頭、と言っても全部頭だが、に針が突き刺さる。 しかし語勢の割りには一気に下まで貫き通すというような刺し方ではなく、頭の上の方を浅めに刺していた。 一旦は死を覚悟したれいむの方にも意外だったようで、一瞬どことなく拍子抜けしたような顔をした。 「ゆ”っぐうっ!!」しかし針が皮を貫く痛みは決して小さくはない。 「いだい"よ!はや"ぐやめでね!!」涙目で訴えるゆっくり。 「やめないわよ」と鈴仙は無情に返し、針で中身をかき回し始めた。 クチュクチュ 「ゆ”ぅっ!?ゆ”っ!ゆっ!」れいむは体を痙攣させ始めた。 「ゆっ!ゆ”えっ!?」目が左右逆に動き出す。これは明らかに痛みから来る反応では無い。 「思った通りだわ・・・!」 脳を外部から刺激する。師匠のマッドな動物実験につきあった事から発想を得た。 単純なゆっくりならこちらの意のままに操ることすら可能かもしれない。 「お脳のあたり痛くないですかぁ~?」 ますます調子にのったうどんげがれいむの中をかき回す。 「いっ!いだいよっ!やっや”やめっででねね”!!」 痙攣しつつも反応する。 「脳に痛覚なんて無いわよ。あんたには脳もないけどね」 サディスティックな笑みを浮かべながられいむの餡子をやさしくいじくる。 「ゆぅっ!?なんだかすごくおなかがすいてきたよ!?」 どうやらツボを見つけたらしい。何度かそのあたりをつつく。 「おっ!お”な”がずい”だっ!おねえざんっ!なにかたべないとしんじゃうよっ!」 死ぬはずがない。とりあえずこの位置を記録しよう。 鈴仙は自らの本来の能力を使い、光の波長を狂わせた。一部の光をX線に変え、れいむを通り抜けたところで再び可視光に戻す。 このような手段を使って鈴仙は物の内部を見ることも出来るのだ。すごいぞうどんげアイ!! ちなみにこの能力はうまく使えば一部の物だけを透けさせることもできる。師匠の服を透かして全裸をいやなんでもないよよい子のみんなは真似しちゃ駄目だよできないけど。 記録を終えた鈴仙。 「ここは空腹感、と」 次に鈴仙は針になにやら導線のような物をつなぎ始めた。 「ね”え”!はや”くたべも”のちょうだい”!!」 餓死直前のような悲壮な顔をしている。丸々艶々しているので説得力なんて無いのだが。 「はーいいくわよー」 そう言って鈴仙はなにやら導線のつながった先の機械のような物をいじる。 「ゆゆっ!」針に電流が流れ、「ツボ」を刺激する。 「ゆー!おなかいっぱいになったよ!!」うってかわって明るい顔になるゆっくり。 「あー満腹にもできるのね。じゃあこれは?」電圧を変える。 「ゆゆー!!もうたべられないよー!!」電圧を変える。 「ゆっ?またおなかが減ってきたよ!?」電圧を変える。 「ゆ”ぅぅぅっ!!お”な”がへっだよ”!!!」電圧を変える。 「ゆ”ががっ!じん”じゃうっ!!だずげでぇえええ!!」電圧を変える 「ゆ”あ”あ”あ”あ”あ”があ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」 普通に生きていたのでは決して味わうことの出来ないほどの空腹感に襲われるれいむ。 一方鈴仙は記録をとるだけである。どうせまた腹一杯だと思わせることが出来る。それどころか満腹なまま餓死するゆっくりさえ作れるのだ。 相も変わらず空腹に絶叫するれいむ。 「うっうー♪」 そこにどこからかゆっくりれみりゃが現れた。しかも体付きだ。れいむの大声に反応してやってきたらしい。 邪魔だから潰しに行こうと鈴仙が立ち上がった途端、 「う”がっ!?にぐまんんっ!!?」 凄まじい勢いで導線を外しつつ箱から飛び出したれいむ。 「がおー♪だべちゃぶぎゃあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」 れいむに食いつかれ、れみりゃはお決まりの台詞も言えない。 「ぶあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!ざぐやどごお”お”お”おおお!?」 たった一匹のれいむに全身を食いちぎられ、れみりゃは泣きながら転がり回っていた。 鈴仙は面白いからとりあえず観察することにした。 「にぐまんっ!うめ”え”っ!!でもたりないい!!」 れいむはれみりゃをどんどん体内に納めてゆく。一方のれみりゃはまさかれいむに喰い殺されようとしているなど信じられないようだった。 「ざぐやあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”だじゅげでえ”え”え”え”え”え”え”!!」 最後に残った頭部はその絶叫を最後にれいむに丸飲みにされた。 「うめえ!うめえ!」 グロテスクに巨大化したれいむ。まさか体付きのれみりゃを再生する間も与えず食い尽くすとは思えなかったし、第一ゆっくりがそれだけ物を食べられるとも思えなかった。 「ゆ”っ!?」れいむの顔が苦痛に歪む。やっぱり吐くのか?と鈴仙が身構えた瞬間 パァン!! 破裂した。あたりにゆっくりの皮と餡子とれみりゃの体の破片が飛び散った。 「い・・・一体何が起こったの!?」 再び様子を見に来た永琳は絶句した。 餡子まみれの部屋には肉まんの香りが漂い、れみりゃの生首が餡子に包まれて転がっている。 部屋の中央では弟子が顔にゆっくりれいむの皮を張り付け、肉片の混じった餡子と肉汁にまみれて固まっている。 飛んできた針が刺さらなかっただけマシだった、と鈴仙は思った。 一方れいむに刺さっていた針は窓から飛び出していった。 「むきゅー♪」 様々な偶然が奇跡的に重なった結果、その針は竹藪で他のゆっくりとともに遊んでいたゆっくりパチュリーに突き刺さった。 「ゆ”っ」 「どうしたのぱちゅりー?」「ゆっくりできる!?」 「お”な”がずい”だよ”お”お”お”お”お”お”お”!!!」 翌日竹藪の一角のゆっくりがすべて消え、その代わりに大量の餡子と皮がまき散らされているのを発見した。 変質者(妖怪?)が出没したのではないかと永遠亭はその噂に持ちきりになり、原因を作った鈴仙もそう思って怖がっていた。 続く このSSに感想を付ける
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「あー、あちぃ……」 ここ最近、やけに強い雨が降り続いているせいで窓を開けられず、部屋の熱気がなかなか抜けない エアコンなんて便利なものを買う余裕がない俺は、一人暮らしをするときに持ってきた扇風機を使って空気を回している。 カバーが外れやすくなっているのが少々怖いが、かなりの強風を出せるので重宝している。 何気なく窓を見ると、普段なら見えるはずの家々がまったく見えない。こりゃまだまだ続きそうだ。 コンコン 「……ん?」 玄関を叩くような音が聞こえた。こんなときに来客か? コンコン 気のせいじゃない。どうやら誰か来たようだ。 のぞき窓を見てみるが誰もいない。こんなときにいたずらするような物好きがいるのだろうか。 玄関を開けてみた。 「ゆっ!おにーさん、まりさたちをたすけてほしいよ!」 足元には、成体サイズのゆっくりまりさが二匹居た。 「おにーさんありがとう!これでしばらくゆっくりできるよ!」 「あめがあがるまでゆっくりさせてね!」 話を聞くに、このまりさたちはゆっくりにしては珍しい同種のつがいであるらしい。 片方のまりさは妊娠している。しかも胎生のほうだ。本人達の感覚によれば、三匹ほどいるらしい。胎生にしては多いほうか。 家族が増えるということで最近川原に巣を移したまではよかったが、そこにきてこの豪雨が始まった。 巣は半日で使い物にならなくなり、なんとか雨風をしのいできたが今日は場所が見つからなくなってしまった。 「あんまり広い部屋じゃなくて悪いな。今はこのくらいしか出来ないんだ」 せめて少しでも快適なように、扇風機を横倒しにして二匹に風をあてている。 「だいじょうぶだよ!そとにいるよりはゆっくりできるもん!」 「ちゃんとおぎょうぎよくするよ!」 野生のわりにはやけに丁寧なゆっくりだと思っていたら、どっちも元々ペットだったらしい。 他のゆっくりがこれくらい賢ければ潰される数も減るだろうに……なんてことを考えていると、腹の虫がさわぎだした。 時計を見るともうすぐ昼時。昼飯を作るとしよう。 「じゃあ俺は飯でも作ってくるから、ゆっくりしててくれ」 「「ゆっくりしていってね!」」 部屋のふすまを閉めると、ポケットからミュージックプレイヤーとイヤホンを取り出す。 今日の作業用BGMを選びながら、昼食のメニューにとりかかった。 「やさしそうなおにいさんだったね!」 「そうだね!」 一方、こちらは残されたまりさたち。妊娠しているほうを母まりさ、していないほうを父まりさと呼ぼう。 まりさたちは、数日ぶりのゆっくりとした時間を味わっていた。 この雨のせいで、眠るときくらいしかゆっくりできていなかったまりさたち。 本音をいうと少しだけ窮屈だけれど、外とは比べ物にならないくらいのゆっくりぷれいすだった。 雨がやんだら巣を探そう。あかちゃんが生まれる前にいっぱいご飯を準備しよう。 二匹の頭は、これからのゆっくりの仕方についてでいっぱいだ。 ちょうどその時。 「――ゆ゛う゛っ!?あがちゃんがででぐる゛う゛う゛うっっっ!!?」 「ゆ!まりさ、ゆっくりがんばってね!」 気が緩んだせいだろうか、母まりさが突然出産を始めてしまった。 時期としてはもうそろそろという頃合だったが、あまりに突然すぎた。 まだなにも準備をしていないというのに! 「おにーさん!おにーさん!!たいへんだよ、まりさのあかちゃんがうまれちゃうよ!」 おそらく食事をつくっているであろうおにいさんを呼ぶまりさ。だが、いくら呼んでもおにいさんは来ない。 聞こえてくるのは何かを焼いたり切ったりする音だけだ。雨も激しいから、声が届いてないのかもしれない。 ならば、とふすまをあけようとするが、まったくびくともしない。 「おねがい゛い゛い゛い゛あ゛い゛い゛でえ゛え゛え゛え゛」 必死に動かそうとする父まりさ。が、ふすまのスライドする位置には雑誌のタワーのひとつが倒壊していた。 ゆっくり程度の力では、無理矢理開けることはできない。 「ゆううううううううううう!」 振り向くと、母まりさが苦しそうに転がって、あちこちに体をぶつけている。 「おちついてね!ぶつかったらあぶないよ!」 そんなことを言われても、こうして悶えでもしないと痛みに耐えられない母まりさ。 ぶつからないよう、父まりさが母まりさと部屋の荷物の間に入る。あちこち体が痛いが、気にしていられなかった。 もし、このとき。 まりさのどちらかが気付いていればよかったのかもしれない。 ぶつかった衝撃で、扇風機のカバーが転がっていったことに。 しばらくして、ようやく母まりさがおとなしくなった。 「がんばってね!ゆっくりうんでいってね!」 「 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 苦しそうな母親の顔の下に、同じ顔をした赤ちゃんが ぽん、と。一匹の赤ちゃんまりさが飛び出してきた。 「ゆっくりちていってにゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛うううううううううぅぅぅぅぅ!!」 生まれた喜びは、ほんの一瞬だった。 母まりさが止まったところは、よりにもよって扇風機の前だった。 しかも、先ほど暴れたときにカバーが外れてしまっている。 そんなところで子供を生めばどうなるか、ほぼ予想がつくだろう。 そう。この赤ちゃんまりさは、自分から扇風機に突っ込んでいく形になってしまったのだ。 「「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」」 扇風機から飛ばされた赤ちゃんをみた二匹。 体はくまなくズタズタにされ、帽子も原型をとどめていない。 「ゆっ……ゆっ…………」と小さくうめき声をあげていたが、すぐに声は途絶えた。 「ゆううううううううう……まりざだぢの……あがぢゃん…………」 悲しみにくれるまりさ達。だが、そんな時間は与えられていなかった。 「ゆ゛うううう!!あがぢゃんがででくるよおおおお!!」 まだ母まりさのなかには赤ちゃんがいる。最初の子を無駄にしないためにも、残りの子たちを精一杯可愛がってあげよう。 そう考えた父まりさは、懸命に対策を考えた。 母まりさを見る。母まりさはもう痛みで動く余裕はまったくない。お兄さんもまだ当分戻ってこないだろう。 頼れるのは、自分だけだ。 「んーしょ!んーしょ!」 考えた結果、父まりさは扇風機のカバーをもどすことにしたようだ。 部屋の隅に転がっていたカバーを引きずっていく。 だが、カバー自体がゆっくりにとってはかなり重い。加えて、片付いていない部屋の足場は最悪に近い。 「ゆっくりいそいでね!はやくついてきてね!」 もうすでに二匹目の赤ちゃんの顔が見え出している。父まりさは、とっさに判断を変えた。 「まりさ……なにしてるの……?」 少し痛みに慣れたらしい母まりさが話しかけてきた。目の前には、扇風機をバックに立ちはだかる父まりさ。 「まりさがくっしょんになるよ!あんしんしてね!!」 どうやら、出てきた赤ちゃんを受け止めて守ろうという魂胆らしい。 「でる゛っ……でぢゃうよ゛お゛お゛お゛お゛お゛!」 二回目のぽんっという音と共に、赤ちゃんまりさが飛び出した。 「ゆっ!?」 父まりさには少し誤算があった。口で受け止めてあげるつもりだったが、実際に赤ちゃんがぶつかったのはおでこのあたり。 赤ちゃんは真横に吹っ飛んでしまった。 「ゆぅっ!いちゃいよう!」 「ごめんねあかちゃん!ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりちていっちぇにぇ!」 生まれて最初にみたのは、お母さんとお父さんだった。 にっこりと笑いかけて「ゆっくりこっちへおいで!」と呼んでいる。 ぴょんと飛び跳ねようとした瞬間。 「ゆ?」 なんだか、突然回りが暗くなったような気がした。 上を見上げる。 雑誌の表紙に描かれたキャラクターたちが、赤ちゃんにゆっくりせまってきた。 「ゆ?」 赤ちゃんがなにやら上を見上げた。 なんだろう、と両親もつられて見上げてみる。 分厚い本が、赤ちゃんの頭に直撃する。口から噴水のように餡子が噴出した。 追い討ちをかけるように二冊、三冊と赤ちゃんに向かって落ちてくる雑誌。 赤ちゃんまりさがぶつかったのは、先ほどお兄さんがスペース作りのためにどかした雑誌群だった。通称「ジャ○プタワー」。 それも慌てて積み上げていたせいで構造は乱雑。いつ崩れてもおかしくない状態だった。 そこに赤ちゃんまりさが突っ込んだ結果がこれだよ。 「「ゆ゛がああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっ!!!??」」 慌てて駆け寄る父まりさ。必死に本の山を切り崩していく。 掘って行くうちに、赤ちゃんまりさの帽子が見えてきた。 「あ……ああああ…………」 が、無事なのは帽子だけだった。 その下にいた赤ちゃんまりさは、もうただの皮でしかない。 「ごめん……ごめんねあかちゃん…………ちゃんとうけとめてあげれたら……」 心からの謝罪を告げると、振り向いてまた扇風機の前に立つ父まりさ。 「ちゃんとうけとめてあげるよ!ぜったいにうけとめるよ!!」 続く三匹目。少しずつ顔が見えてきた。 両親に緊張がはしる。 そして。 「ゆっくりちていってにぇ!」 最後の赤ちゃんが飛び出してきた。 幸いにもコースはさっきの赤ちゃんと全く同じだ。 「ゆっくりきゃっちするよ!!」 口に僅かな衝撃が走る。 衝撃で後ろに飛ばされるがなんとか着地。口の中では赤ちゃんが「おとーしゃーん?」ともぞもぞ動いている。 よかった。こんどはせいこうしたんだね。 ふひゅう、と父まりさから溜め息がもれた。 かぞくはへっちゃったけど、そのぶんいっぱいゆっくりさせてあげるね。 そんな感傷に浸っていると、後ろがなにやらガリガリとうるさい。 振り返る。 黒い帽子が、扇風機に巻き込まれていた。 「ゆううううううううっ!?」 キャッチした瞬間、まりさはほんの僅かだったが衝撃で後ろに飛ばされた。 その時、ちょうど帽子だけがまきこまれてしまったのだ。 「ま゛り゛さ゛のぼう゛じがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 ゆっくりにとって飾りは命と等しい。父まりさは迷いなしに扇風機に飛び掛った。 「ぼうじがえぜえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!」 ……よりにもよって、赤ちゃんゆっくりをくわえたまま。 「おーい。飯ができ……た…………ぞ……?」 飯を運んでふすまを開けた俺が見たのは、やけにちらかっている部屋と、そこかしこにとびちっている餡子。 そして、自我喪失といった状態のまりさが一匹。 「おい、どうした!なにがあったんだ!?」 「ゆ……うぅ……う゛わあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あん!」 まりさはじゅっと泣き続け、やっと話せるころには雨がやんで、久しぶりに太陽が顔を出したころだった。 澄んだ空気と夕日が心地よかったが、俺とまりさの空気は未だに重かった。 残った餡子を出来る限り集めて、庭の花壇に埋めてやる。 ボロボロになった片割れまりさの帽子に赤ちゃん達の帽子を重ねて、墓がわりにしてやった。 まりさはしばらく墓を眺めていたが、振り向くとゆっくり歩き出した。 「行くのか?」 「あめがやんだから……ゆっくりでていくよ。おにいさん、ありがとう……」 ぴょんぴょん跳ねて、まりさが遠ざかっていく。 「いつでも来いよ!ゆっくり待ってるからな!」 聞こえないかと思ったがちゃんと届いたらしい。 「ゆっくりしていってね!」 精一杯の笑顔で振り向いたまりさを。 自動車が一瞬で轢いていった。 「いいやつは早死にする、か…………」 案外嘘ではないのかもしれないな、なんて思いながら俺は五つの帽子を見つめていた。 「せいぜい、あの世でゆっくりしていってくれ」 ―――――――――――――― あとがき ゆっくりって結構喋らせにくいんだなぁという気がします。 特に悲鳴とか。 少しの間でも楽しんでもらえたら幸いです。 このSSに感想を付ける
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ゆっくり鉄の掟 1.ゆっくりできないゆっくりは、ころす。 2.ぐずなゆっくりは、ころす。 3.じぶんだけゆっくりするゆっくりは、ころす。 4.みにくいゆっくりは、ころす。 5.びょうきのゆっくりは、ころす。 6.すっきりがへたなゆっくりは、ころす。 7.いなかものなゆっくりは、ころす。 8.にんげんにこびるゆっくりは、ころす。 9.かざりのないゆっくりは、ころす。 10.ゆっくりのかざりをうばうゆっくりは、ころす。 11.ゆっくりのかざりをうばうゆっくりは、ころす。 12.こどもをゆっくりさせないおやゆっくりは、ころす。 13.みんなをゆっくりさせないドスまりさは、ころす。 14.おやきょうだいでも、ゆっくりするためなら、ころす。 元ネタはゲルショッカーの掟 カッとなってやった、特に反省はしていない。 何という内ゲバ、とか ここが矛盾してるだろ、とか 大事なことなので2回言いました、等は全て仕様です。だってゆっくりだし。
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うちの庭はゆっくり達によく荒らされる。 花壇(すでに雑草だらけ)や池、そして外敵が少ないせいなのだろう。いつの間にかゆっくりが来て荒らしていくのだ。 今は面倒なので荒らされたまま放置しているが、それでもゆっくり達は煩いし何かとうざい。 最初は潰して駆除していたが、飽きずに奴らは来る。ゆっくりの死体を放置していても「はふはふっ」と食う始末だ。きもい。 なのでこの際やつらで遊ぶことにした。 そのために今回使うのは『ギロチン』。そう、首をはねる処刑道具だ。 今回はそれをゆっくりに使うわけだ。 早速庭にいるゆっくり霊夢の家族を部屋に連れていくことにする。 一週間ほどから庭に住み着いているゆっくり霊夢の家族は子ゆっくりが多く、マジでうるさい。 普段は閉め切っている庭への入口を開けるとちょうどゆっくり家族は池の脇でゆっくりしているところだった。 俺は奴らに近づくと『⑨でもわかるゆっくり虐め by阿Q』に従って声をかける。 「ゆっくりしていってね!」と。 「「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」」 ああうるさい。特に子ゆっくりの声は甲高くて耳に障る。 「ゆっ、おじさんどうしたの? ここはれいむたちのおうちだよ!!」 「いまみずばでゆっくりちてるのー!」「おじさんゆっくりできるひとー?」 おじさんとはひどい。まだ10代(16進数)だぞ。しかし我慢だ。 「ああ、ゆっくり出来るよ。おにいさんはほら、隣のおうちに住んでいてね。挨拶にきたんだよ」 「そこのおうちはおじさんのおうちだったんだ!」 お、一応そこの分別はあるんだな。ただこの庭も俺の家なんだけどな。 「おじさん!」 バスケットボール大ほどの一番大きな母ゆっくりが話しかけてくる。他の子ゆっくり達は水遊びに戻っていた。 「ん、なんだい?」 「おじさんのおうちはきょうかられいむのおうちにするね!!」 前言撤回。やっぱこいつら分別ないわ。いや、そういう次元の問題じゃないわ。 「あ~、だめだよ。でもおにいさんのおうちに来てゆっくりさせてあげてもいいよ」 「ゆっ! じゃあゆっくりおうちに入れてね!!」 あいよ、と子ゆっくり共々我が家へ入れてあげる。 入ってすぐの部屋が今日のために用意したゆっくり虐待ルームだ。なのでゆっくりに使う道具以外は何も置いてない殺風景な部屋である。 「はい、ここがおにいさんのおうちだよ。ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていくね!!」と母ゆっくり。 「ゆっくりちていくね!」「ゅ!なにもないよ!」「でもきのいたが冷たくて気持ちいいよ!!」 続く子ゆっくりは反応が様々だ。えぇと、全部で11匹か。母親ゆっくり含めて12匹と。 「おじさん、れいむたちのあたらしいおうちには食べ物がないの? ゆっくりもってきてね!」 「ちょっ」 もう新しいおうちとか言いやがった。ありえん(笑) …というかおじさんはいい加減やめて。 「わかったよ。でもその前にゆっくり楽しめるおもちゃで遊ぼうよ」 「あとでいいから食事もってきてね!」といい加減うざい母ゆっくりだが、子ゆっくりは楽しめるおもちゃという言葉に反応する。 「おもちゃ! ゆっくりだしてね!」「ゅーゅー♪」「おもちゃがさきにほしいよ!!」 そんな感じで子供が言うので母親も食事は後でよくなったようだ。 そしてようやくギロチン様の登場だ。 ゆっくり向けに作ったので高さは大体1m。刃はギロチンの高い所に留め具で固定されていて外すと刃は落ちるというわけだ。 さらに刃の背中側には一本の長い縄が付いていてそれを引っ張っていれば留め具がなくても落ちることはない。 ちなみに威力は実証済みだ。腕ぐらいに太い木の枝もバッサリだぜ。さすが冥界の刃だ。 ああ、もう早くこいつらを真っ二つにしたい。でももう少し我慢だ。 「ゆっ? なにそれ???」「たのしめるの??」「おじさんこれでゆっくりできるの??」 子ゆっくりは見たことのない道具に興味心身だ。 「まぁ待てこうやって使うんだよ」 俺はポケットから饅頭を出してギロチンへとセットする。 「ゅー!おまんじゅうたべたいよ!!」「ゆっくりわけてね!!」 なんて言いながらギロチンに突っ込んでくるゆっくりしない畜生どもを弾く。食べ物見るとこれだよ。 「ゆっくり見て行ってね!」 「「「「ゆっくりみていくね!!!」」」」 条件反射でゆっくり挨拶を返すゆっくり家族。扱いやすいなー。 「よーし、みてろよー」 留め具を外す。縄を手から放す。刃が落ちる。饅頭真っ二つ。 まさに一瞬だ。 ゆっくり達もびっくりしてるようだ。 「ゅー、こわいよー!」「おじさんこれじゃゆっくりできないよ!!」「ほかのおもちゃよういしてね!!「あとおかしもだしてね!!!」 さすがのゆっくりも危険なものだと判断出来たらしい。それはむしろ好都合だ。 俺は俺に向かって食事をもってきてねとうるさい母ゆっくりをギロチンの台にセットする。 「ゆゆっ! なにするの!!? ゆっくりやめてね!!!」 無視しながら母ゆっくりが逃げ出せないように固定する。あと、しゃべらせないために口に布をつめてやる。 「むぐーっ! んんぐぐぐぐーーーー!!!」 「ゅ! おじさんなにするの!!」「おかあさんをゆっくりはなしてね!!」「ゆっくりできないおじさんはしね!!!」 子ゆっくり達は勇敢にも体当たりしてくる。しかしダメージなどあるわけがない。 「おいおい、これからが楽しいんだぞ?」 「なにいってるのかわからないよ!! ぜんぜんたのしくないよ!!!」「はやくおかあさんをゆっくりたすけてね!!!」 11匹の子ゆっくりが抗議してる中、俺はギロチンの留め具を外した。 「アーッ!!」「おがあざああああん!!!」「やめでえぇぇぇえ!!!」「ゅーーー!!!」 しかし刃は落ちない。そりゃそうだ。刃に付けた縄を掴んでるので落ちることはない。 「ゅっ! おちてこないよ!!」「ゆっくりたすかったね!!」「おじさんのばーかばーか」「ゅー♪」 「お前ら馬鹿か? 馬鹿だろ? いや、馬鹿だ。俺がこの縄を放したらどうなるか覚えてないのか」 言うと勝ち誇っていた子ゆっくり達の顔が固まっていく。 「い”やぁぁぁぁぁ!!」「おじさんばなざないでぇぇ!!」 「じゃあこの縄をお前らが引っ張れよ。俺はもう放す」 俺はそう言うと縄を刃の上方、ギロチンの頂点に備え付けていた滑車に引っかけると子ゆっくり達に残りの縄を投げつけた。 長い縄なのでゆっくり全員で引っ張れるだろう。 すると子ゆっくり達は数秒考えた。 「みんなでおかあさんをゆっくりたすけるよ!!」「なわをみんなでひっぱるよ!!」「ゅー! ひっぱるょ!」 ゆーゆーと何やら気合い入れると、子ゆっくり11匹は縄を咥えて引っ張りだした。 それを確認すると俺は縄から手を離した。と同時にゆっくり達に襲いかかる重み。 「おもひよ!!」「へも、みんふぁでふぁんふぁればふぁいようふだひょ!!」 翻訳すると重いよ、でもみんなで頑張れば大丈夫だよ、か。いつまで保つやら。 だがしかし、子ゆっくり達の母を思う力は強いようだ。すでに始ってから3時間が経とうとしていた。 がんばってはいる。だが小さなゆっくりほど疲れが見てとれた。 「がんばるなぁ。そんなお前たちに感動したからお菓子用意したぞ」 床に色んな種類のお菓子をばらまいてやった。なんてやさしいんだ俺。 ゆっくり達は物欲しそうな瞳で床に散らばったお菓子を見る。 ちょっと縄から口を放して跳ねれば食べられる距離。そう、母を見捨てて家族を裏切ればの話だ。 子ゆっくり達は家族の絆と食欲の間で揺れ動く羽目になった。 (これからが楽しいところだな) ゆっくり達は食欲に弱いからな。食料が無いために共食いするなんてこともよくあること。 俺は隣の部屋へ移ると、扉にあけた覗き窓から様子を観察することにした。 お菓子を床に置いてから5分程だろうか。もっと短かったかも知れない。 一番のちびゆっくりが食欲に負けてお菓子へと飛び付いたのだ。 「ゅー!おいちいよ! ゆっくりできるー!!」 母や姉にも遠慮せずにバクバク食べるちびゆっくり。 子供なら仕方ない、そう言えるのは通常時のみ。今はゆっくり達にとっては緊急事態なのだ。 乱闘でも起こるかなと思ったがこのゆっくり家族は思いのほか絆が強いようだった。 一番の姉であろうゆっくりは言う。 「ゆっくりみんなのぶんもってきふぇね!!」「おかしみんなでたふぇたらげんきになっておかあさんたすけられるよ!!」 ちびゆっくりを責めず、今のゆっくり達にとって最良になりえる指示を出した。 だが、ちびゆっくりはその言葉を聞くと、 「ゅ! ぃゃだょ!!! これはぜんぶわたちがたべるの!!」 「だめだよ! おがあざんじんちゃうよ!!」 「おねえちゃんがたすけてね! わたちつかれたよ!!」 「つかれてるのはみんないっしょだよ!!」 しかしここで妹ゆっくり達が動き出した。 このままではちびゆっくりに全部のお菓子を食べられてしまう。 一人ぐらい縄を放しても大丈夫だろう。 食欲と集団心理が彼女たちを動かした。 一匹、そしてまた一匹と縄から口を放してお菓子に口をつける。 「はふっはふっ! うっめめっちゃうっめ!!!」 「な"んでみんないっぢゃうの"おぉぉぉぉ!!」 姉の悲鳴が響く。もはや縄を咥えて引っ張っているのは二匹だけだった。 姉妹の中でも大きい二匹だ。少しの間がんばった。つまり少しの間しかもうがんばれなかった。 ザンッ!!!! 「むぐっ!!?」 無常な風切り音と母ゆっくりの小さな断末魔が聞こえた。 見ると母ゆっくりは綺麗に真っ二つに斬られている。少し意識が残っているようだったが、餡子が床へ流れ出て死んだ。 さて、子ゆっくりはというと、 「なんで放したのぉぉぉ!!!」「おねえちゃんのせいだー!!」 「おねえちゃんとはもうゆっくりできないよ!!」「ゆっぐりじねぇぇぇ!!!」 ひどい話である。最後までがんばった姉ゆっくり達を、がんばらなかった妹ゆっくり達が責める。それもお菓子を頬張りながら。 姉ゆっくりはぷるぷると涙を浮かべながら震えていた。それは何かを我慢しているようだ。 「ゅー♪ がんばれなかったおねえちゃんはゆっくりちんでね!!」 一番最初に縄を放し、さらに家族の崩壊を招いたちびゆっくりの罵倒がトリガーとなった。 「うががあああああ!!!」「あががががが!!!」 突然ゆっくりとは思えない叫び声を上げて二匹の姉ゆっくりが暴走する。 二匹が向うのはまずちびゆっくり。 「ゅ!? うべぇっ!!??」 突進してきた姉ゆっくりに反応もできずに潰されてしまった。 もう一匹の姉ゆっくりは生きてるとも死んでるとも判別付かないソレに飛び乗るとそのまま何度も跳ねた。床に広がっていく餡子。 これでちびゆっくりは完全に死んだ。 「ゆ!? おねえちゃんたちやめてね!!」「ゆっくりさせてえぇぇぇぇ!!!」 「やあぁぁぁ!!!」「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」 鬼と化した姉ゆっくり達に恐怖し、バラバラに部屋を跳ねまわる。 鬼ごっこの始まりだな。ただし鬼は殺る気モードの二匹だ。 追うものと追われるものでは動きがまるで違う。 追われるものは恐怖からか上手く跳ねまわれず、終いには転ぶ。 そうして小さく力の弱いゆっくり達から鬼姉ゆっくりに挽き潰され、噛みつかれ、そして食われた。 「や”あ”あ”あ”!! お、おじさんどこいったの!? おじさんだずげでぇぇぇ!!!」 おにいさんと言え。そしたら考えたかも知れない。あ、だめだ。食われたw そして10分程度でリアル鬼ごっこは終了し、11匹いた子ゆっくり達も姉ゆっくり2匹を残すのみとなった。 体は餡子にまみれ、髪には白髪がまじり、目は恐怖ではなく狂気で見開いていた。 こえぇ、これは子供が見たら絶対泣くぜ。 あまりに怖いからこの二匹はこのままこの部屋に放置しよう。 「ぎゃぅぁあばば!!!」 「なんだなんだ?」 その夜、あの二匹を放置した部屋から悲痛な声が聞こえたので慌てて見に行った。 「こいつら…」 するとその二匹が争っていた。口元には餡子。見ると部屋にまき散らされた餡子が無くなっていた。 ギロチンの周り、母ゆっくりが在った場所にも、だ。 (こいつら食べやがった。あんなに助けようとしていた母ゆっくりまでww) そしていま、お互いを食べようと睨み合っているのだ。 これは食欲じゃないな。お互い食べられるかもと信用できないんだ。 勝負は意外とあっさり終わった。 一匹が体当たりすると、体当たりされたゆっくりは転がっていった。 転がったゆっくりは台に落ちている刃へ当るとそこで止まった。 「ぐぁ…ぅ」 体当たりされたゆっくりは相当な衝撃を受けたせいで朦朧としている。 体当たりしたゆっくりはギロチンの縄を咥えて引っ張った。 数時間前は助けるために引っ張っていた縄。しかし今度は殺すために縄を引っ張った。 動けないゆっくりは、刃が上方に昇ったせいでよっかかる物が無くなったのでギロチン台へと突っ伏す。 それを確認した縄を咥えたゆっくりは、縄を放し、姉妹を処刑した。 「うげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげ!!」 鬼と化し、完全に狂ったそのゆっくりは一晩中笑い続けた。 結局俺はその狂ったゆっくりを野へ放してやった。 殺したら何だか呪われそうだし、家に置いていても笑い方が怖くて眠れないしな。 それからしばらく我が家の周りに種別問わずゆっくりの死体が増えることになる。 数ヶ月後にはゆっくり達の屍の上で鬼のような顔をしたゆっくりが息絶えていたらしいということを聞いた。 終
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飼いゆっくりれいむ 27KB ・れいむが死にません。 ・エロくありません。 ・最近れいむいじめがひどかったんで、れいむ愛でモード突入中。 ・仕事の都合もあって製作ペースが戻らないので、まだまだリハビリが必要な感じです。 『飼いゆっくりれいむ』 D.O 我が家は、築100年を軽く超える古風な木造家屋である。 爺さんの若かった頃は農業をしていたとのことなので、蔵もあれば庭もあり、 さらにその周囲は生垣をはさんで小さな林まで広がっている。 外から見れば、歴史の重み、どころか幽霊屋敷の雰囲気漂わせていることだろう。 現在の主である私が手入れを怠っているので、庭はコケと背の高い雑草が生い茂り、生垣も所々穴が開いているからなのだが。 私が子供の頃は、周囲にまだ多くの農家も残っていたが、 十年ほど前に、ゆっくりの大規模な襲撃が起こり、すっかり疲弊してしまったようである。 もう少し山に近い田舎に立ち上がった、のうかりんを使った実験農場計画が始まった頃に多くの農地は売却され、 実験農場が順調な現状を考えると、このあたりも数年後にはのうかりん印の農場になりそうだ。 現在では町、というには空き家が多すぎる、少々寂しい地域となってしまっている。 そんなある日、仕事から帰ってみると、 庭にサッカーボールサイズと、テニスボールサイズの饅頭が一つづつ落ちていた。 日が暮れているので良く見えないが、赤白リボンの奴はたしかれ・・・れ?ゆっくりだ。 「ゆゆっ!おにーさん、ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちしちぇっちぇにぇっ!」 「・・・・・・。」 家の電灯に照らされてみれば、薄汚れていて何ともゆっくりしていない奴等である。 少なくとも、見ているこちらとしてはゆっくりできない。 親子なのは間違いなさそうだが、親の方は全身余すところ無く、 マジックで唐草模様が描き込まれているあたり、町からやってきたのは間違いないだろう。 「にんげんさん、れいむはしんぐるまざーなんだよ!」 「へぇ・・・。で?」 「かわいそうなれいむたちを、ゆっくりかっていってね!」 「きゃわいくってごめんにぇっ!」 「・・・はぁ。」 なんだか、やり遂げた表情でこちらを見ている。 刈って、狩って、・・・いや、飼っていってね、か? どうやら、こんなにゆっくりしたおちびちゃんなんだから、人間さんも飼ってくれるに違いない、ということらしい。 とりあえずサンダルの裏を、その自信満々の顔面に押し当てて、塀の方に転がしてやることにした。 「ゆべしっ!」 「ゆぴぃぃいい!」 「・・・ペッ!」 噛んでいたガムが母れいむのリボンにジャストミートする。 「・・・・・・飯作ろ。」 別にゆっくりとやらに大した関心はない。 単に、コソコソ隠れているなら可愛げもあるが、ずうずうしさが気に入らなかっただけである。 これまでも野良猫やらなんやら、しょっちゅう仮の宿に使われていたので、 今更ゆっくりが庭に舞い込んだところで気にしない。 糞をばら撒かれないだけ、犬猫よりはありがたいくらいだ。 庭に住みたきゃ勝手に住めばいい。 こちらには当然世話する義務なんぞ無いのだから。 「ゆ゛、ゆ゛、ゆ゛、ゆ゛・・・・」 「ゆっくりー!」 痛みから回復したれいむ親子の方は、感動に打ち震えていた。 なにせ気がついたら、母れいむのリボンにペタリとついているのは、あの憧れの飼いゆっくりバッジ。 れいむも遠くで見ていたときは気づかなかったが、バッヂがまさか人間さんが口から吐き出されたものだったとは。 まあ、自分達もナワバリ(無意味極まるが)にしーしーでマーキングすることは多いのだから、そういうものなのだろう。 ・・・などと考えながら、リボンにへばりついたガムを、嬉し涙に潤んだ目で眺めていた。 そう、れいむはついに、ゆっくりの中でも最もゆっくりできると言われる、 あの飼いゆっくりにしてもらえたのであった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 翌朝。 便所から出て縁側を歩いていると、庭の隅に放置していた木箱から、れいむ親子が飛び出してきた。 「「ゆっくりしていってね!!!」」 「ん?まだいたか。」 朝からうるさい奴らだ。やはり猫の方がましだな。 「ゆーん。おにーさん、れいむたちにあさごはんちょーだいね!」 「ちょーらいにぇっ!」 昨日のゆっくり共が、これから仕事に行くという時に、なんだかずうずうしくゆぅゆぅ鳴いている。 「・・・・・・庭の草でも花でも、自分で適当に食え。」 「ゆゆっ!?おはなしゃん、たべちぇいいにょ?やっちゃー!」 「ゆーん、ごはんさんいっぱいだよ~。」 勝手に住むのはかまわんが、ゆっくりフードたら言うものまで買ってやる気など無い。 というか、ペットでもないのにいちいち飯などやらん。 「むーしゃ、むーしゃ。しあわせー。」 「むーちゃ、むーちゃ。ゆ・・ゆぇーん。」 「どうしたの、おちびちゃん。」 「れいみゅ、こんにゃにむーちゃむーちゃちたの、はじめちぇ。」 れいむ達は、飼い主であるおにーさんの愛情を全身で味わっていた。 なにせ、適当に食え、と言って指差した庭には、 柔らかそうなゆっくりした草、 タンポポやシロツメクサの類の雑草寄りの花、 背の低い木には実や柔らかい葉っぱ、 それに、今は何も成っていないが柿やビワの木も生えており、季節が来たら食卓を飾ってくれることだろう。 当然昆虫やミミズも、その気になれば取り放題だ。 ここは、森の中にあったとしたら、数十匹のゆっくりを余裕をもって支えることができる最上級の狩場であった。 それらが全て、この2匹だけのためのごはんだと言うのである。 「おにぃさぁん、ありがとぉぉぉおおおぉぉ。」 そんなある日、夕食の生ゴミを袋に入れて、裏庭のポリバケツに入れようとしたところ、 ゆっくり共が、よだれを滝の様にたらしながらこちらを見ていた。 ・・・・・・そういえば、今都会では『ゆっくりコンポスト』なるものがはやっていると聞く。 正直言って生ゴミを貯めこむのは嫌だし、こいつらでも使ってみるか。 「・・・食え。」 翌朝、袋の中身がきれいさっぱりなくなっていた。 袋に何かが入っていた形跡すら無い。よだれらしきものでベタベタではあるが。 「ゆっくちちたおやさいしゃんだったにぇっ!」 「おにーさんにありがとうってするんだよ。」 「ゆっくちりきゃいしちゃよ。」 「なるほど。こいつは便利だ。」 それからというもの、あの親子は毎日ポリバケツに放り込むはずだった生ゴミを、おやつだと大喜びで食べている。 生ゴミを放置しすぎて増えていたりぐるとかも減った。 生ゴミがなくなったからか、りぐるも食べているのか・・・ しばらくすると、いちいちこいつ等が『おうち』とやらにしている、庭の隅の木箱まで生ゴミを持っていくのもめんどくさくなってきた。 まずは縁側の下に少し穴を掘り、用済みとなったポリバケツを横倒しにしてはめ込む。 ポリバケツの内側に土をいくらか入れ、周囲の穴との隙間にも土を詰める。正面から見るとパッと見トンネルのような感じだ。 あとはあのゆっくり親子を中に放り込んで、自家製コンポストは完成。 「ゆわーい。きょきょはれいみゅたちのおうちなんだにぇ。」 「ゆっくりー!おにーさん、ありがとう!」 なんかぽいんぽいんと跳ねて喜んでいるが、台所からも食卓からも近いここが、 生ゴミを放り込むのに適していただけだ。 「ん、で、あと何が必要だ?」 「「ゆぅ?」」 なんといっても、使い道ができた以上、もはや野良猫と同等ではない。 金をかけてやるつもりはないが、それなりのメンテナンスはしてやろう。 コンポストとしてある程度長持ちしてくれなければ困るからだ。 「ゆ、ゆぅーん!れいむはみずあびができたらうれしいよ。きたないとゆっくりできないよ。それと・・・」 「それと?」 「おちびちゃんにも、ばっじさんがほしいよ!おちびちゃんもかいゆっくりのばっじさんがほしいよ。」 水浴びか。なるほど、こいつ等が饅頭のくせにカビないのは不思議だったが、やはり不潔にしておくのはよろしくないといったところか。 こっちとしても軒下にサッカーボール大のカビ饅頭があるのは気分が悪い。自分たちで清潔にしてもらおうか。 あとは・・・ん?おちびちゃん・・・にも? ・・・・・・妙に馴れ馴れしいのも合点がいった。まさか飼われているつもりだったとは。 まあ、使い道がある今となっては都合がよくもあったが。 「水は、そうだな。このタライに水を入れといてやる。勝手に使え。」 「ゆっくりー!」 「それと・・・バッジねぇ。ああ、あれでいいか。」 持ってきたのは、私が中学生時代に学生服につけていた、襟章だった。 鈍く銀色に光る襟章、どうせこいつ等がバッジとやらを活用する日は来ないのだから、これで十分だ。 リボンに乱暴にネジ式の襟章を突き刺して固定すると、赤色の中に鈍く光る銀色は、思いのほかしっくりときた。 「ゆわーい!ゆっくちちたばっじしゃんだー!」 「ゆぅぅ、よがっだねぇ、よがっだねぇぇえ、おぢびじゃぁぁああん。」 喜んでもらって何よりである。この調子で雑草むしりと生ゴミ処理を頑張ってもらいたいものだ。 翌日には、縁側下のコンポストの近くに「おといれ」と称してうんうん用の穴も掘っていた。 生活の場に排泄物を置いておくのはやはり嫌なのか。だが、これはこちらとしても都合がよかった。 このうんうんという排泄物については、定期的に土と雑草に混ぜて花壇の肥料にしている。 なかなか良質なようで、しかも採集の手間も要らないしありがたいものだ。 「ゆーん、おにーさん。おといれのおそうじしてくれてありがとう。」 「うんうんがなくなっちぇ、ゆっくちできりゅよ。」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− こうしてれいむ親子がコンポストとなった数日後、家の庭に最近ご無沙汰だった来客が来た。 「ねこさんだぁぁあああ!ゆっくりできないぃぃぃ!!」 「ゆぴぃぃ、おきゃあしゃんこわいよぉぉ!」 「ん、ああ、トラか。久しぶり。」 生垣の穴から庭に入ってきたのは、近所で気ままな野良生活を送っている猫だ。 こいつに限らず、我が家を通り道にする猫は多い。 「ゆぁぁぁぁ、おにーさぁぁん。ねこさんこわいよぉぉぉぉ。」 「ゆっくちさせちぇぇぇぇ。」 「・・・嫌なら自分でなんとかしろ。」 「「ゆぅぅぅ、ゆっくりできないよぉ。」」 別にサッカーボールサイズの良くわからん物体にじゃれつく様な、酔狂な猫達でもないが、 町生活でトラウマでもあるのか、度重なる猫の襲撃に、れいむ親子は自分達で何とかすることにしたようだ。 数日後から、徐々にだが、目に見えて生垣の穴がふさがり始めた。 「ゆーえす!ゆーえす!」 「おきゃーしゃん、はっぱしゃんもってきちゃよ。」 「じゃあおちびちゃん、このすきまにはっぱさんをおしこんでね。」 「ゆっくちりきゃいしちゃよ。」 生垣や塀の隙間に、小石を詰め、小枝を刺し、上から土を盛って、また葉っぱや枝を詰める。 近くで見るとやはり幼稚園児の工作の域を出るものではないが、遠目には生垣に溶け込んで見えなくも無い。 何重にもゴミを積み上げているので、強度のほうはちょっと蹴りを入れたくらいでは吹っ飛ばないくらいになっていた。 「これでねこさんはいってこれないね!」 「ゆっくちー。」 「にゅぁ~ん・・・ぐるるる。」 ・・・・・・。 「「どぼぢでねござんはいっでるのぉぉぉおお!?」」 「・・・塀の上からだろ。」 まあ一応は通りにくくなったので、特に頻繁にここに来る数匹以外は入ってくることも無くなり、 多少は平穏になったようだ。 それにしても、なんだか最近庭がきれいになってきた気がする。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 生垣の穴がれいむによってあらかた埋まった数日後、 久しぶりに友人が家まで遊びに来た。 「ゆゆっ!?おにーさんのおともだち?ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちしちぇっちぇにぇ。」 「おー、間知由。お前ゆっくり飼ってたんだな。エラい装飾過剰だけど。」 「いや、飼ってないし、あの唐草模様は来たときからだ。俺の趣味じゃない。」 「ふーん。つってもバッジついてんじゃん。」 「ありゃガムだ。」 「え゛・・・。」 「ああ、みかんの皮は庭のポリバケツに放り込んどいてくれ。」 「え?これってこいつらのおうちだろ?」 「いや。コンポスト。」 「んー。・・・え゛ぇ?」 「ゆわーい、おやつだにぇ!ゆっくちありがちょー。」 「むーしゃ、むーしゃ。しあわせー。」 ついでに、夕食の魚の骨も放り込んでおいた。 「ぽりっ、ぽりぽりぽり・・・ゆっくりー!」 「・・・・・ふーむ。」 「どうした?」 「いや。ゆっくりって、案外飼いやすい生き物なのだろうかと思ってな。」 「ただの饅頭だろ。・・・・・・何だよ、その目は。」 「まったく。世の中にはどんだけ愛情注いでも懐かれない奴もいるってのに。」 「そんなもんかね。」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− そして、庭が放置しっぱなしの幽霊屋敷状態から、見違えるようにきれいになった頃、 れいむ達の平穏な毎日に、突然不幸が舞い降りてきた。 「Zzzzzz・・・。」 「すーや、すーや。」 今日は日曜日。おにーさんも日当たりの良い縁側で昼寝中。 れいむ親子も庭に生えた木の木陰でゆっくりと惰眠をむさぼっていた。 そのとき庭に、普段と違う空気が漂う。 「うー。」 「ゆぅ?・・・すーや、すーや。」 「あまあまー。」 「ゆ・・・すーや、すーや。・・・・・・れみりゃだぁぁぁああああ!!!」 庭に突然飛来したのは、本来夜行性のれみりゃ(胴無し)。 庭のすぐ奥にある林は、昼でも薄暗く、たまに昼でも活動するれみりゃが現れたりする。 しかも、このあたりは農家だったこともあり、害ゆ対策として、れみりゃを大量飼育していた時期もあったので、 最近森の奥でしか見なくなったれみりゃ種もチラホラいたりするのだ。 「おちびちゃん、ゆっくりにげるよ!」 「ゆあーん。れみりゃはゆっくちしちぇにぇ。」 ぽよん、ぽよん、と大急ぎでおうちに飛び込むれいむ親子。 れみりゃは追ってこなかった。どうやら助かったようである。 しかし、一つだけ気がかりがあった。 「ゆぅぅぅ、おきゃーしゃん、れみりゃはゆっくちできにゃいよぉ。」 「ゆ!おちびちゃん。ここはおにーさんがつくってくれたおうちだから、れみりゃなんてはいってこれないよ!」 「ゆっくちー。でみょ・・・。」 「おちびちゃん?」 「おにーしゃん、すーやすーやしてたよ?れみりゃにゆっくちひどいことされてにゃい?」 「ゆゆっ!?」 「そろーり!そろーり!」 おにーさんの無事を確かめるべくおうちから慎重に這い出るれいむ。 見つかったら命はないだけに、そろーりそろーりにも力が入る。 そして、れいむは驚愕の姿を目撃した。 「うー!うー!」 「Zzzzzz・・・・、じゃま・・・」 ・・・・・・れみりゃがおにーさんにじゃれていた。 「ゆぁぁぁああああ!おにーさんがたべられるぅぅぅううう!!!」 「うー?」 「やめてねっ!おにーさんをたべないでねっ!れみりゃはゆっくりどっかいってね!!」 ゆっくりしたおにーさんを助けるべく、れいむはれみりゃに立ち向かう。 しかし、口にくわえた木の枝をどれほど振り回しても、空を舞うれみりゃ相手には届かなかった。 「ゆぅ、ゆぅぅ、どうしてとどかないのぉぉ。」 「うー!あまあまー。がぶり。」 「ゆひぃぃぃぃ、れいむのあんこさんすわないでぇぇぇぇ・・・。」 「おきゃあしゃぁぁあん、ゆっくち、れみりゃはゆっくちしちぇぇぇぇ!」 「お、肉まん。」ぱさり。 「うー!うー!」 といったところで目が覚めたおにーさん。 玉網を使ってあっさりとれみりゃを捕獲したのであった。 それにしても、生ゴミを処理して肥料を作り、 庭の管理までやってくれた挙句、夕食のおかずをおびき寄せてくれるとは、 つくづく使いでのあるコンポストだ。 つい今さっきまでたっぷり飯を食っていたこの肉まん、中身がが詰まっていてうまそうだな。 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」 「おきゃーしゃん、ゆっくちしちぇぇぇぇ。」 ザックザックザック 薄っぺらくなった方のれいむには、中身を詰めなおしてやることにする。 掘り出したのは、「おといれ」とやらになみなみと貯められた餡子。 こいつを、中身の減ったれいむの口からねじ込んでやることにした。 「ゆ゛っ、ゆぼぉっ!おにーざん、やべでぇ、ゆっぐぢでぎなっ!ゆぼっ!」 「おにーしゃん、やめてあげちぇにぇ!おきゃーしゃんがいやがっちぇるよ。」 無視。餡子は餡子だ。多少土が混ざっているが、中に詰めなおしてやれば問題ないだろう。 「ゆ゛っ、ゆっぐぢしていってね。ゆげぇ。」 「やっちゃー!おきゃーしゃん、げんきになっちゃよ。」 「ゆ、ゆぅぅ・・・おにーさん、ありがとぉ・・・。」 「しゅーり、しゅーり、ちあわちぇー!」 ふむ、消耗してはいるが、まだ当分は使えそうだ。 そして、その夜は多すぎて食べきれなかった肉まんの残りを、コンポストに放り込んでやった。 やはり一人暮らしにあのサイズは無茶な話だな。 「ゆわーい。きょうはごちそうだにぇ!」 「ゆーん。きっといっしょにれみりゃをやっつけたから、ごほうびなんだよ。」 「ゆっくち!ゆっくち!」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− そんな生活が、しばらく続いたが、 子れいむが成体にまで大きくなった頃、親れいむの方が死んだ。 あとで調べたが、町の野良の寿命は平均一年かどうかと、大分短いらしい。 我が家に来た時には中古のポンコツだったということか。 「お・・・おにーさん。おちびちゃんを、・・・これからもゆっくりさせてあげてね。」 「特になにも変らんよ。」 「おちびちゃん、・・・ゆっくりしていってね・・・・・・」 「おかーしゃん、おきゃあしゃぁぁぁあああん!!!すーりすーりしてね、ぺーろぺーろしてねぇぇえええ!!!」 リボンは子れいむの方が欲しがったのでくれてやり、死体のほうはぐちゃぐちゃにすり潰して肥料にした。 花壇の花も元気に育つことだろう。 「おかーさん。おはなさんになったんだね。」 「まあそうとも言えるな。」 「ゆっくりしていってね。おかーさん。」 まあ、そんなことはどうでも良かったのだが、少し問題が生じてきた。 コンポストの、生ごみ処理能力が落ちてしまったのだ。 「ゆぅぅ~。さびしいよぉ。」 「おちびちゃんがほしいよぉ。」 「すーりすーりしたいよぉ。」 どうも孤独な生活と発情期が重なって、ノイローゼ状態になったらしい。 頭数が減ったうえ、どうにも食欲が無い。庭の雑草もまた伸び始めてきた。 これは、新しいゆっくりを取ってくる必要がありそうだな。 その日、夕食の生ゴミをコンポストに放り込みながら、 れいむにつがいを探してやる、と言った時のれいむの喜びようは大変なものだった。 体が溶ける寸前まで水浴びをして、リボンのしわ一つ一つまで丹念にあんよでつぶして伸ばしていく。 コンポスト内の清掃も丹念に行い、 さらに子供が出来た後のために、花やイモ虫、果物の皮などのごちそうから保存食の干し草まで貯めこむ。 にんっしん中のベッドまで葉っぱと草を使って作り終えて、準備万端でその日を迎えた。 約束の日、私はれいむを連れて街を歩き、れいむ的に「すっごくゆっくりしてる」まりさを手に入れた。 この白黒饅頭、帽子にアイロンをかけた形跡もわずかにあり、恐らくバッジを引きちぎったのであろう傷痕も見られる。 飼われていたというなら、それなりの躾もされているのだろう。好都合だ。 「ゆふん!そんなにまりさをかいたかったら、かわせてやってもいいのぜ。」 「ゆっくり!まりさ、ずっとゆっくりしようね!」 「ゆん!なかなかゆっくりしたれいむだから、とくべつにすっきりしてやってもいいのぜ。」 本人も乗り気のようだから都合よい。つがいにしてやることにして、家に連れていった。 「ゆぅ~ん、まりさ。すーり、すーり。」 「ゆへぇぇ!いいからとっととまむまむをむけるのぜぇ!『ぼよぉぉおん!』」 「『ごろんっ』ゆぅ!?もっとゆっくりしてぇ!」 「しったこっちゃないのぜ!まりさのぺにぺにをおみまいしてやるのぜぇ!!」 ずぼぉっ!ずっぽずっぽずっぽずっぽ・・・ 「ゆぁーん、いだいぃぃぃい!らんぼうすぎるよぉ。もっと、ゆっぐりぃ!」 「ゆっふっ!ゆっゆっゆっゆっゆっゆっすっきりぃぃぃいいい!」 「ずっぎりぃぃ。」 とりあえずれいむの腹が膨れてきたので、予定どおりにいったようだ。 「ひどいよまりさ・・・」 「ゆふぅ。ひとしごとおわっておなかがすいたのぜ。にんげんさん、とっととごはんをもってくるんだぜ!」 「その辺のを適当に食え。」 「ゆゆ!?なにいってるのぜ。ゆっくりふーどさんなんて、どこにもないのぜ。」 「草があるだろ。」 「な・・・なにいってるのぜぇぇ!くささんはごはんじゃないのぜ! ふーどさんがないならけーきさんでもいいのぜ!はやくもってくるのぜ、くそじじぃ!」 「ゆぅ。なにいってるの?おにーさんにあやまってね。くささんはおいしいよ。むーしゃむーしゃ。」 「ゆぎぃぃぃいい!もういいのぜ!はやくおうちにいれるのぜ!べっどですーやすーやするのぜ!」 「そこに家ならあるだろ。」 「な・・・なにいってるのぜぇ!これはごみばこさんなのぜ!くさくてきたないのぜ!」 「ひ、ひどいよまりさ!おにーさんがれいむにくれた、ゆっくりできるおうちだよ! それに、れいむがいっしょうけんめいおそうじしたんだよ!ゆっくりあやまってね!」 「・・・いいよ別に。文句があるなら勝手に出ていけば。」 「ゆふん!まったく、ばかなじじぃとゆっくりしてないごみれいむのほうが、このおうちからでていくのぜ! ゆっくりしたまりささまが、とくべつにこのおうちをつかってやるのぜ!」 「ふーん・・・。れいむ、どうやら一緒に暮らすのは無理そうだが。」 「ゆぅぅぅぅ・・・ゆっくりできないまりさだよぉ。」 とりあえず、私が家から追い出されるのは嫌なので、ゆっくりしたまりささまとやらは、門から丁重に出て行ってもらった。 あれだけ態度がでかいと、野良をやっていくのも大変だろうに、大したものだ。 しかし、ゆっくりと言っても、コンポスト向きのとそうでないのがいるのかもしれない。 黒帽子がダメなのか、飼われていたのがダメなのか、まあ、どうでもいいことだ。 れいむの腹にいるちび共の中に黒帽子がいたら、それもはっきりするだろう。 つがいこそいなくなったものの、孤独を埋めるという当初の目的は達成されたようである。 それから数匹分の食欲を発揮し始めたれいむは、3週間後、無事れいむ種一匹とまりさ種一匹を出産した。 赤ゆっくりが腹から射出される勢いには驚いたが、庭は柔らかい芝生であったのが幸いしたのか、 せっかくれいむが作っていた草のクッションから1m以上離れて着地したものの、つぶれることはなかった。 「「ゆっくちしちぇっちぇにぇ!!!」」 「ゆっくりしていってね!ゆぅーん、ぺーろぺーろ、おちびちゃんたちかわいいよぉ。」 これで、コンポストの方は今後も安泰そうだ。 母れいむがチビ共にもバッジが欲しいとか言ってきたので、画鋲のカサの部分をセメダインでくっつけておく。金バッジだ。 これで満足して生ゴミを処理してくれるのだから、安上がりなものだ。 ちなみに、ゆっくりしたまりささまに出て行ってもらってから二日後、門の前にみすぼらしく、 帽子もかぶっていないまりさ種が一匹転がっていた。 「やっばりがっでぐだざぃぃ・・・おねがいじばずぅ。」 とか言っていたが、ゆっくりを飼う趣味などないので、無視しておいた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− それからしばらくは、コンポストとしても庭の芝生管理としても特に問題はなかった。 ピンポン玉サイズの子供たちでは、成体一匹分の処理能力を補えるかと、多少不安ではあったが、 どうやら、成長中のチビ共の方が食欲は旺盛らしく、生ゴミは毎日順調に処理され、肥料になっていった。 黒帽子の方も特に文句を言わず、生ゴミをムシャムシャ食らい、庭をぽよんぽよんと跳ねまわっている。 やはりあの態度は、育ちが問題だったようだ。 だが、赤ゆっくり達が産まれてから一月ほどたち、そろそろ冬の近づきを肌で感じ始めた頃、 またしてもコンポストの性能が低下してきた。 朝、コンポストの中をのぞいてみると、まだ昨日の生ゴミが残っている。 さらにその奥では、歯をガチガチと鳴らしながら、目の下にクマをつくったれいむ一家がいた。 「お、おおお、おにーさん、おうちがさむいよぉぉぉ・・。ねむれないよぉぉ・・。」 「しゃむくてゆっくちできにゃいぃぃぃ。」 「ごはんしゃんつめちゃいよ。むーちゃ、むーちゃ、しょれなりー。」 コンポストはれいむ達なりにきっちり入口を塞いでいるが、やはり所詮はポリバケツ。 まだ昼間は温かいが、壁一枚隔てた向こうの、夜の寒気を完全に防ぐことはできないようだ。 この時期でこれでは、冬の間はコンポストの機能が完全に停止しかねない。 家に入れるという選択肢はもちろんないが、 本格的にコンポストの改造を行う必要がありそうだ。 その日の昼、れいむ一家に『たからもの』とか言う小石や押し花や、ガムの付いたリボンらしきゴミをコンポストから出させると、 大規模な改装に取り掛かった。 まずは、ポリバケツを掘り出して、横倒しにすると天井になる、壁の一部を四角く切り抜く。 それに、ちょうつがいと留め金をつけて、外から開けるようにした。 ゆっくりは、冬には巣の入り口を密閉するらしいので、生ゴミの投入口をつけてやったわけだ。 次にバケツの入口、つまりゆっくりの出入り口だが、せいぜい直径30cm程度のゆっくりに対しては大きすぎる。 壊れたすのこを材料にして、ドーナツ状の板をつくり、バケツの口に取り付けてやった。 これでゆっくりの出入り口は、必要最低限の大きさになり、 木の枝などで塞ぐ手間も、寒気の吹き込む隙間もぐっと減るはずだ。 あとは、再び縁側の下にポリバケツを埋めなおし、これまではむき出しだった側面にまで土をこんもりと盛っておく。 外から見ると、生ゴミの投入口と、ゆっくりの出入り口だけ穴のあいた、砂場の砂山のような外観となる。 縁側の下なので、雨風で盛り上げた土が崩れる心配は無い。 地下は冬でも暖かいというので、これで断熱は十分だろう。 数十分の作業中、庭で遊ばせていたれいむ一家を呼び寄せた時の反応は、 以前コンポストを、はじめてつくった時以上のものであった。 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆわぁぁぁぁああい!すっごくゆっくりしたおうちだよぉぉおおお!」 「ゆっくち!ゆっくちー!れいみゅたち、こんなゆっくちしたおうちにしゅんでいいにょ!?」 「ゆわーい!なかもあっちゃかいよー!ゆっくちー!」 「ふーい、疲れた。あとはこいつでも中に敷いとけ。」 「ゆぅぅぅぅうう!しゅごーい!ゆっくちちたおふとんしゃんだー!」 「おにぃさん、ありがと、う、ゆぇぇぇええん!」 「おきゃーしゃん、ないちぇるにょ?どっかいちゃいにょ?ゆっくちしちぇにぇ。」 「おちびちゃぁぁあん!れいむはうれしくってないてるんだよぉ。ゆっくりー、ゆっくりー!」 近所の農家から頂いてきた干し藁をひと束くれてやっただけだが。 とりあえず、この反応からして、今後はまたコンポストとして元気にやってくれそうだ。 こちらはやることやったので、あとのメンテはこいつ等がかってにやってくれればいい。 かつて母れいむと一緒に野良生活を送っていた頃、れいむには夢があった。 温かくて、雨の心配も、風の恐怖も感じないですむおうち。 毎日お腹いっぱい食べられるだけのごはん。 しかも、そのごはんを手に入れるために、命の危険など感じずにすむゆっくりプレイス。 外敵の心配もないそのゆっくりプレイスで、 ゆっくりしたおちびちゃん達とすーりすーりしたり、のーびのーびしたり、 おうたをうたったり、水浴びですっきりーしながら、毎日ひたすらゆっくりする。 夜になったら、ゆっくりしたおうちに帰り、ふかふかのおふとんの中で、 家族で肌を寄せ合ってすーやすーやする。 たまにはあまあまが食べられたら言うことはない。 これが、れいむのかつて夢見たすべてであった。 そして、今、この場所には、れいむが望んだもの全てがあった。 全てのゆっくりが追い求め、そして見つけることの出来なかった場所、ゆっくりプレイス。 だが、れいむにとってのそれは、人間さんがコンポスト、と呼ぶこの場所に、確かに存在していたのだった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ゆっくりー!」 「すーり、すーり、しあわせー。」 「すーり、すーり、・・・ゆっ、ゆっ、ゆっ」 「ゆふぅん、だめだよまりさぁ。ゆふぅ、ゆふぅーん!」 れいむ親子が初めて我が家のコンポストとなって2年。 結局外部から新たなゆっくりを連れてくる必要はなくなった。 こいつらは、家族以外のゆっくりがいないとなると、姉妹同士でつがいを作り続け、今はすでに4世代目である。 今はこれまた姉妹である、れいむとまりさのつがいがコンポストとして活躍している。 それと、最近は花壇の世話もめんどくさくなったので、街でゲッソリしていたゆうか種も一匹拾って庭に住まわせている。 最初はコンポストの連中が花を勝手に食う、食わないでもめた時期もあったが、 群れでもない以上大した量を食われることもなく、しかも花の肥料がコンポスト産だということもあり、 それなりの折り合いをつけることで落ち着いている。 「「すっきりー!」」 などと思っているところで、また増えるつもりのようだ。 れいむの頭ににょきにょきと生えたツタには赤れいむが3に赤まりさが2。 まあ、構わない。どうせ代替わりが激しいゆっくりである。 うっかり病死などしないうちに子供を作ってもらわなければ余計な手間だ。 それに増えすぎるようなら何個か潰して肥料にするだけ。 庭もすっかり華やかになって、もう幽霊屋敷の頃の面影は残っていない。 「おはよーございます。」 「ああ、農場の。おはよう。」 最近ついにこの辺も、のうかりん農場化が進み始めた。 生垣の向こうから挨拶してきたのうかりんも、そこの従業員である。 「とってもゆっくりした庭ですね。きれい。」 「まあ、ゆうかが一匹でやってるんだがね。」 「うふふ。それは失礼しました。でも、それ以上に・・・あなたの飼われているゆっくり達。」 「?」 「とってもゆっくりしてますね。今までたくさん飼いゆっくりを見ましたけど、一番ゆっくりしてますよ。」 「ふーん。そんなもんかね。」 同じゆっくりである、あののうかりんが言っているなら正しいのだろう。 よくわからんが、この2年間で一つだけ確信したことがある。 こいつらには、コンポストという仕事が向いている、ということだ。 リクのあったゴミ処理場ネタは今度また書きます。 それにしても自分のSS製作ペースがそれほど落ちたわけではないのに、 いつの間にか餡小話のそうとう下に追いやられてたり。 SS増加ペース早っ。 とりあえず、シリーズものについてはそろそろなんか書きます。 町れいむ、レイパー、計画中のペットショップシリーズ リクの消化もまだおわってないなぁ。 挿絵 by街中あき 挿絵 by??? 餡小話掲載作品 ふたば系ゆっくりいじめ 132 俺の嫁ゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 148 ここはみんなのおうち宣言 ふたば系ゆっくりいじめ 157 ぱちゅりおばさんの事件簿 ふたば系ゆっくりいじめ 249 Yの閃光 ふたば系ゆっくりいじめ 305 ゆっくりちるのの生態 ふたば系ゆっくりいじめ 333 銘菓湯栗饅頭 プラス本作品 『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順・おまけについては何とも言えないけど) 春-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 161 春の恵みさんでゆっくりするよ 春-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 154 竜巻さんでゆっくりしようね 春-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 165 お姉さんのまりさ飼育日記(おまけ) 春-2-3. ふたば系ゆっくりいじめ 178 お姉さんとまりさのはじめてのおつかい(おまけのおまけ) 春-2-4. ふたば系ゆっくりいじめ 167 ちぇんの素晴らしきゆん生(おまけ) 春-2-5. ふたば系ゆっくりいじめ 206 町の赤ゆの生きる道 夏-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね 夏-1-2. ふたば系ゆっくりいじめ 139 ゆっくりのみるゆめ(おまけ) 夏-1-3. ふたば系ゆっくりいじめ 174 ぱちぇと学ぼう!ゆっくりライフ(おまけのおまけ) 夏-1-4. ふたば系ゆっくりいじめ 235 てんこのインモラルスタディ(おまけのおまけのおまけ) 夏-1-5. ふたば系ゆっくりいじめ 142 ゆうかりんのご奉仕授業(おまけ) 夏-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 146 雨さんはゆっくりしてるね 夏-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 205 末っ子れいむの帰還 秋-1. ふたば系ゆっくりいじめ 186 台風さんでゆっくりしたいよ 秋-2. ふたば系ゆっくりいじめ 271 都会の雨さんもゆっくりしてるね 翌年 ふたば系ゆっくりいじめ 224 レイパーズブレイド前篇(おまけ) D.Oの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る れいむが死んでるじゃねえか!(老衰でゆっくり大往生) -- 2017-12-22 22 36 05 増えすぎた結果お兄さんに赤ゆっくりを潰されてしまい、怒って家族で家出をするも環境についていけなくて しばらくして戻ってきたら別のゆっくりたちがコンポストとして生活してて結局野良ゆっくりとして生きる展開ありそう -- 2017-05-23 20 19 48 クソまりさの存在以外はぽかぽかや唐草模様は何何の実だ? -- 2016-09-01 18 41 18 心が洗われる作品でした、 短編集みたいで、 ゆっくり読めました。 -- 2015-01-15 12 01 21 なんといういい話・・・ぽかぽかする -- 2014-06-05 17 15 44 かんどー♪ -- 2014-05-30 19 48 40 謙虚なゆっくりれいむだったから生き残れたんだろうな。 必要以上の高望みをしなければいいということか。 -- 2014-03-27 13 29 47 あのまりさ(成体)はやっぱり生き残れなかったのかな(まあ、あんなゲスゆっくりなんてどうでもいいけどね!)。 -- 2013-07-29 12 24 18 ゴムゴムの実w -- 2013-07-06 03 16 12 ひさびさにいい話だ 環境にも優しいなんて…あー、コンポスト欲しくなってきた -- 2013-04-28 23 58 18 るーるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるr -- 2013-03-28 11 42 02 良い話だ、ゆっくりにも何かしらの利用価値があるんだなペット以外に -- 2013-01-19 13 13 05 ゆっくりできすぎててんごくいきそうだよ! -- 2012-10-13 21 44 04 ゆっくりできるいい話だ 唐草模様のゆっくりが悪魔の実に見えるwww -- 2012-09-12 18 24 08 あっさり死んでいった先代たちを通して読むと、感慨深いものがあるな。 いいよね。死の危険が少なくて。 -- 2012-08-19 21 38 21 家にある生態系の循環にゆっくりが組み込まれた 理想の形だなぁ、ご時勢に合ったエコだし。 さらに家庭菜園も被害なく出来たら完璧だな! 唐草レイムは・・・まぁなんだ、プププwwwwww -- 2012-08-11 02 35 24 ゆっくりできる話ですね。 でも、唐草模様きめぇww -- 2012-07-30 16 58 41 今までSSでみたゆっくりまともランキングTOP10には入る -- 2012-07-08 19 10 57 唐草模様きめぇwwwww -- 2012-05-22 09 04 25 高望みせずに、限られた環境で満足できるのも、生存競争には必要な能力だね。 ペットって結局どこまでいっても別の生き物なんだし完全にわかりあうことなんてできない。 だから必要な程度以上は干渉しない、構い過ぎないことが必須なんだと思う。 それはそうと最後の唐草模様きめぇ 噴いた(笑) -- 2012-04-10 21 17 44
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ゆっくり水攻め 川に近いゆっくりの巣(横穴式、築半年)を発見したので良い事を思いついた。 スコップを持ってきてゆっくりの巣の周りを掘り起こして、土を入り口の周りに積み上げる。 当然、母ゆっくりが警戒してくるので、「水が入らないように壁を作ってるんだよ。」と言っておく。 するとこちらをやさしい人間と思って警戒をとき、さらには手伝いまでしてくれる。 ゆっくりが寝静まるまでその作業を行い、巣から寝息が聞こえてきたら本番だ。 ただちに川から溝を掘り進み、入り口の手前につくった穴に大量の水を貯める。 十分水がたまったところで巣の入り口と、臨時のダムを連結し水攻め開始。 なんとか巣から出ようとするゆっくりの様子が観察できるが、流れる水に阻まれて外に出られない。 「ゆ゛っく゛りし゛た゛いよ゛お゛お!!」と愉快な悲鳴が聞こえてくる。 母ゆっくりが体を張って水の浸入を防ごうとするが、圧力に耐え切れずに崩壊。 親子で協力して一生懸命集めた食料も、頑張って作った草のベッドも、中の良い親子もまとめて水に沈んでしまう。 入り口から饅頭のなれの果てが浮いてきたら作戦成功。 ポイント: 天気が悪くなりそうなときは巣の入り口が塞がれてて分かりにくいぞ!晴れの日に探そう! 入り口から下り坂の巣をみつけよう! なるべく川の上流のほうから水を引くこと! 巣の入り口手前のため池は大きいほど一気に殲滅できるぞ! ため池を作らない場合はじわじわとした水攻めが楽しめるぞ!
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餡子の芯まで凍るような冬が終わり、若葉芽生える春が訪れようとしていた。 薄く緑に色づいた地面が盛り上がると、土の中から一匹のゆっくりが顔を出した。 「ゆっくりー!!!」 ゆっくり。 低い知能で必死に活動する饅頭。 顔を泥に染め、ふるふると体を振るのはゆっくり霊夢。 厳しい冬を乗り越えるため、木の下に掘った巣で長らくゆっくりとしていたのだ。 体は成体というには若干小さく、ボーリングの球ほどだ。 「まりさ!お外がすごくゆっくりしているよ!!」 穴から一歩外に出た成体のゆっくり霊夢が、穴の奥に呼びかける。 「ゆゆっ!ゆっくり出るから待っててね!」 小さな巣穴から窮屈そうに顔が押し出てくる。 ゆっくり魔理沙だ。 頭にかぶった帽子が引っかかるようで、出るのに苦労している。 「ゆ!あまり寒くないよ!ゆっくりできそうだね!!」 泥だらけになりながらも、春の訪れに目を輝かせるゆっくり魔理沙。 ゆっくり霊夢と同じく、成体というには小さいボーリング玉サイズ。 2匹にとって、越冬は始めての経験であった。 「さっそくご飯をとってこようね!!ふたりでゆっくりしようね!!」 先に出たゆっくり霊夢がゆっくり魔理沙を導き、森の奥へと消えていく。 「ゆっくりしていってね!!!」 2匹の声が、静かな森にいつまでも響いた。 「ゆっくりした結果がこれだよ!!」 2匹は巣穴に収穫した食料を運び終えた。 森には、大量の食料が溢れていた。 やわらかい若葉や、モンシロチョウ、活発に動くムカデにカエル、ダンゴムシ。 2匹がヨダレを垂らすほどの御馳走が、目の前には山ほど集まっている。 「まりさたちがご飯を取りにいかなかったから、森さんもゆっくりできたんだね!!」 「森さん、ゆっくりしてくれてありがとう!!」 森の恵みに感謝し、さっそく食事に入る。 特に冬眠などしないゆっくりは、冬の間、巣に蓄えた食糧を調整しながらゆっくり過ごす。 この2匹は初めての越冬に緊張し、節約に節約を重ねた結果、蓄えた食糧の半分もなくならない内に冬は終わった。 「おいしいよ!ゆっくりできるぅー!!!」 「むーしゃ♪ むーしゃ♪ しあわせー♪」 節約生活の思い出を埋めるように、ガツガツと山を削り取っていく2匹。 春の恵みを前面に受け続ければ、あっと言う間に成体と呼べるほど大きくなるだろう。 大量の食料、そして冬の間の備蓄を全て食べつくした2匹はまた、食料を確保しに巣を離れた。 夕方。 人間の里を見下ろせる丘で、2匹は寄り添っていた。 あの後、食料をいちいち巣に持ち帰ることはせず、見つけたその場で食べて回った。 単純な生態と、大量の食事は、2匹をバスケットボールほどに大きくさせていた。立派な成体ゆっくりだ。 「ゆっ、れいむ・・・」 「なあに、まりさ」 成れいむにさらに体を寄せる成まりさ。 「ずっと、ふたりでゆっくりしようね。いつまでも、ふたりでゆっくりしようね」 そっとささやいたのは、成まりさだった。 いつものように元気と勢いに溢れた声とは違い、儚げで今にも消えてしまいそうな一言。 成れいむはすぐに答えず、ふと懐かしい日々を思い浮かべた。 親まりさの茎から生れ落ちたときのこと。 初めて食べたモンシロチョウに感激したこと。 隣の巣に住んでいたまりさと出会ったこと。 喧嘩して体当たりをしあったこと。 親から独立するとき不安がっていた自分に、まりさが一緒に暮らそうと言ってきてくれたときのこと。 初めて巣を作ったときには、すぐ隣で、自分と同じように顔を泥だらけにしてくれた。 越冬の準備を始めたとき、他の成体ゆっくりに動じず、毅然とエサ場から食料を確保してきてくれた。 冬篭りを始めてからは、節約に文句を言いながらも、絶対に隠れて食べたりしなかった。 いつもそばで笑っていてくれたまりさ。 いつも一緒にゆっくりしてくれたまりさ。 ・・・大好きなまりさ。 「れいむもまりさとゆっくりしたいよ・・・ずっと、ずっとずっと」 頬をすりあてる。 親愛の証だ。 「ゆっ!れいむ、うれしいよ!!まりさはれいむと一緒だからゆっくりできるんだよ!!!」 力強く頬を押し付けてきた成まりさ。 成れいむは、不思議と嫌な気分にはならなかった。 だって大好きなまりさだから。 「まりさ!まりざ!!!れいむもだよ!!れ゙いむ゙もまりざどだからゆっぐりできるんだよ!!!」 粘着する頬には、透明な液体が溢れていた。 ぶるんぶるんと弾ける頬。 互いの顔は高潮し、息が荒くなる。 「れいぶぶうう!!!だいずぎだよ゙お゙お゙お゙お゙!!!ずっどゆ゙っぐりじよ゙ゔね゙え゙え゙え゙!!! 「まままっままままままりざあああああああ!!!」 「人ん家の前で盛りやがって・・・」 さっきからパンパンと妙な音がしていた。 なんだろうと思い、外に出ると家の前でゆっくり2匹が交尾をしているではないか。 里の見える丘で堂々と交尾をするとは、大胆な奴らだ。 「加工所に売り飛ばしてやる・・・」 捕獲用の網を取りに行こうと思ったが、ふと迫っているほうのゆっくりに目が行く。 あれはゆっくり魔理沙だ。 男は、ゆっくり魔理沙が大嫌いだった。 他のゆっくり、例えばゆっくり霊夢なんかはバカではあるが基本的に純粋で優しい性格だ。 しかしゆっくり魔理沙は、いざというときには親を裏切り子をも食らうような性格をしている。 以前、男の家に侵入してきたゆっくり集団に制裁を加えたときも、そうそうに仲間を売り、自分だけは助かろうとしていた。 そのゆっくり魔理沙はいたぶるだけいたぶって処分された。 男のゆっくり魔理沙嫌いはそのときから始まった。 「んぶぅうぅううう!!!!れいむうう!!!すっぎり!!!ずっぎりするよ!!!!!」 「まりざああ!!!れいむもずっぎりずるよ゙お゙お゙お゙お゙!!!!」 そんな男のことなどお構い無しに、交尾は最終段階に入っている。 交尾終了は疲労感もあるだろうし、逃げ出すのは難しいはずだ。 捕獲は簡単なはず、男は捕獲用の網と箱を取りに家に戻った。 「ゆ゙っぐぁっっ!!!!!」 「ゆ゙ゆ゙っ!!!!!!!」 2匹が一段と大きく震える。 やわらかい皮が揺れ、一瞬、周囲に静寂が訪れる。 「すっきりー!!!」 「すっきりー!!!」 男が戻ると、ぐったりとしている2匹のゆっくりが目に入った。 どうやら交尾は終わったようだ。 姿を見れば、成れいむの頭から茎が生え始めている。 交尾は成功したらしい。 男が背後からこっそり近づいても、行為で疲れた成れいむも成まりさも気がつかない。 自身から伸びる茎を見上げていた成れいむが成まりさに視線を向け、笑顔で声を上げる。 「家族が増えるよ!!」 「やったねれいむ!!」 ぬるぬるした体液に染まった地面を跳ね、成れいむに寄り添い、目を閉じる成まりさ。 捕まえてくださいと言っているようなものだ。 「俺の家でゆっくりしていってね!!!」 勢いよく網を振り下ろす。 一瞬の出来事に何もできないまま、成まりさは網の中に閉じ込められた。 「ゆっ!?」 「ま!まりさっ!!?」 「油断したな!俺の家でたっぷりゆっくりさせてやる!」 網を持ち上げ、上部を摘む 成まりさが出られないようにするためだ。 「ゆゆ!ゆっくりおろしてね!」 「おじさん!まりさをおろしてあげてね!」 網の中で暴れる成まりさだが、人間の力に適うはずもない。 「よし、網から出してやる」 ゆっくりと地面に下ろされるが、そこには透明な箱。 成まりさは、親に教えられた人間が使う危険な箱だと瞬時に理解した。 「ゆ!まりさ逃げて!危ない箱だよ!!」 成れいむも同じことにすぐ気がついた。 しかし、気がついたところで力なきものに運命は変えられない。 あっという間に蓋をされ、透明な箱には成まりさが収まった。 「出して!ゆっくりしなくていいから早く出してね!」 「おじさん!そこじゃまりさはゆっくりできないから早く出してあげてね!!!」 「せっかく入れたのに出すワケないだろ、バカチン」 かたかたと動く箱を男は思い切り踏みつける。 今度はがたがたと震え始めた。 「れいむ!まりさを置いて早く逃げてね!!」 魔理沙のくせに、パートナーの心配なんかしている。 まあ、それも今のうちだろう。 男は何度も箱を踏みつける。 「ま、まりさ!まりさと離れたくないよ!!」 それに今は茎があるから満足に逃げることもできない。 男にも、成れいむにも分かることだ。 男は魔理沙入り箱を持ちあげ、家に向かった。 「ゆ!早く出してね!れいむとゆっくりするんだよ!!!」 「まりさを持って行かないでね!!れいむと赤ちゃんを置いていかないでね!!!」 茎に気をつけながら、ゆっくりと追いかけてくる成れいむ。 「そんなにコイツが大切なら、お前も連れて行ってやるぞ」 成まりさだけが目的だったので、成れいむにはあまり興味はなかった。 「ゆ!れいむだめだよ!!人間は怖いんだよ!!れいむは赤ちゃんをゆっくり守ってあげてね!!」 箱の中から必死に説得をする成まりさの願いも虚しく、数秒後にはもう片方の手に成れいむが乗っかっていた。 まりさとはどこでも一緒だよ、その言葉にためらいは感じられなかった。 男の家に入ると、男は成まりさを床に置き、同じく下ろした成れいむにエサを用意した。 「ゆっくり食べていいぞ」 キャベツの千切りとニンジン、コーンスープにビスケット添え。 こんなに豪華な食べ物は2匹とも初めて見た。 「ゆ・・・!まりさを出してあげて!一緒にゆっくりしたいよ!」 エサに手をつけず、成まりさの開放を望む成れいむ。 男の足が成れいむの目の前に落とされ、床がゆれた。 「やめて!まりさはいらないよ!れいむだけでゆっくり食べて!」 「だってよ。それにお前、ご飯食べないと茎の赤ちゃんが死んじゃうぞ」 そうだ、自分は今妊娠しているのだ。 成れいむは茎を見上げた。 「ごめんまりさ!れいむ、ゆっくり食べるよ!」 「赤ちゃんのためにもゆっくり食べてね!」 心配させまいと、成まりさが満面の笑みで答える。 男は用意していた大きめの水槽に山ほどエサを入れると、最後にエサを食べつくした成れいむを入れて蓋をした。 「ゆ!れいむは出してあげてね!」 そんな声を無視し、男は寝室に向かった。 電気を消され、急に不安になる2匹。 「れいむ、大丈夫・・?」 「こっちは大丈夫だよ。まりさはケガしてない?」 箱が窮屈なこと以外は特に問題ない、そう答えると成れいむは少し安心したようだ。 「赤ちゃん、ゆっくりできるかな」 果たして自分達はどうなってしまうのか。 不安な夜だが、決して明けて欲しくない夜。 2匹のゆっくりは目を閉じた。 朝の日差しで目を覚ました成まりさ。 「・・・・ッ!?!!!?」 動けない。 なぜだろうと、記憶をさかのぼる。 そうだ、自分達はあの人間に捕まえられたのだった。 れいむは無事だろうか、狭い箱を無理矢理動いて水槽に目を向けると、昨日とは違うものが見えた。 「ゆ!まりさ!!れいむ達の赤ちゃんだよ!!すごくゆっくりしてるよ!!」 水槽にいたのは8匹もの赤ちゃんゆっくり。 一心不乱に水槽に入ったご飯を食べている。 「れいむううう!!!赤ちゃんがうまれたんだね!!!ゆっくりしないで起こしてくれればよかったのに!」 「まりさが疲れてるみたいだったから、ゆっくりしてもらったんだよ!」 水槽をぴょこぴょこ動く赤ゆっくりを見て、自分が親になったことに涙する。 できることなら、今すぐこの頬をすり合わせたい。 しかし自分を閉じ込める箱は、まったく動かない。 「ゆ!もうひとりのおかあさんだ!!」 「ほんとだ!ゆっくちうまれたよ!!」 「おかあさん!ゆっくちしようよ!」 声に気がついた赤ゆっくり達が水槽にへばりつくように親まりさを凝視している。 「ゆうううう!!!おかあさんだよ!!!みんなゆっくりしていってね!!!!」 ボロボロと溢れる涙。 大好きなれいむとの赤ちゃんが自分を見ている。 「よお、ゆっくりしてるか?」 次に現れたのは、最も会いたくないものだった。 昨日、自分達を閉じ込めた人間。 「ゆ!おじさん早く赤ちゃんに会わせてね!!」 「おじさん、早くまりさを出してあげてね!赤ちゃんにすりすりさせてあげてね!!」 男は水槽で遊ぶ赤ゆっくりを数える。 計8匹。赤れいむ3匹と赤まりさ5匹。憎き魔理沙種が5匹もいる。 「よし分かった。あわせてやろう」 親まりさの入った箱を持ち上げ、別室へと移動させる。 そこに用意してあったのは、1畳ほどの広さを鉄製のケージで囲った牢獄。 そして中央で二つに分断している。 上部が開いているので、箱を逆さまにして親まりさを左側の牢獄に落とす。 「ぶぺっ!」 着地に失敗し、変な声を上げた。 次に、水槽を持ってきて中身を分別する。 魔理沙種は親まりさがいるほう、左側の牢獄へ。霊夢種は右側の牢獄へ。 親れいむだけは水槽にいれたまま、牢獄手前の床に置く。 「れいむの赤ちゃん!ゆっくり返して!!」 水槽にへばりつく親れいむとは裏腹に、親まりさは最愛の娘5匹と頬をすり合わせて喜んでいる。 「ゆーん!!まりさの赤ちゃん達!かわいいね!!おかあさんとゆっくりしようね!!!」 「ゆっくち!おかあさんゆっくち!」 「おかあさんとゆっくちしたい!!」 泣き出したのは、右側、霊夢種用のケージに入れられた赤れいむ3匹だ。 「ゆゅ!!おかあしゃーん!!!ゆっくちできないよー!!!」 中央を分断するケージにすがりつくが、目の前の親まりさに触れることはできない。 当然、水槽に入った親れいむにも届かない。 「お前らが何でそこに入っているか、分かるか?」 いきなり話しかけてきたのは、あの男。 びくっと2匹の親ゆっくりが震える。 「ゆ!そんなのわからないよ!!!いいから早く出してね!!!」 「おじさん、早くゆっくりさせてね!!」 「それは、そこの親のまりさがクズな種だからだ」 親まりさを指差して淡々と告げる男。 喋ることをやめ、親まりさに注目する赤ゆっくり達。 「ゆ!なにをいってるのおじさん!!!まりさはとってもゆっくりしてるんだよ!!」 「そうだよ!!まりさ、何も悪いことしてないよ!!!」 2匹は必死で否定するが、ゆっくり魔理沙嫌いの男は耳を貸さない。 「嘘を言え、お前らまりさ共は自分が助かるためならすぐに仲間を売るだろう」 「まりさと一緒にいたけど、そんなこと一回もされなかったよ」 「まりさそんなことしないよ!!」 ぷくっと膨れて威嚇しながら親れいむが答える。 怒りをあらわにしているようだ。 「ほう・・・」 男は一匹の赤れいむをつまむと、親まりさによく見える位置に置いた。 「ゆ!おそとおそと!!ゆっくちぃ?」 緊迫感のカケラもない赤れいむだ。 男はデコピンをした。 「ゆきゅっ!?」 吹き飛んだ赤れいむが壁にぶつかり、餡子を少し吐き出し気絶した。 「ゆああああ!!!れいぶのあがぢゃんになにずるのおおおおお!!!!!???」 「まりざのあがぢやんがああああ!!!!」 その様子を見ていた他の赤ゆっくりもぴーぴー騒ぎ始める。 男は喚き騒ぐ親まりさを牢獄から出した。 親まりさはすぐに赤れいむに駆け寄る。 「ゆっ!大丈夫だからね!!ちょっと痛いけど我慢してね!!!」 気絶しているというのに声を掛けながら傷口を舐める親まりさ。 「その赤ちゃんを殺されたくなかったら、こっちへこい。まりさ」 男の手元にはアルコールランプが用意されていた。 親まりさにその道具はよく分からないが、炎が出ているのを見て危険だと感じた。 「どうした?赤ちゃんなんか死んでもいいから自分は助かりたいのか?」 「そんなことないよ!ゆっくりそっちに行くよ!!」 空気を含み、威嚇しながら男に近づく親まりさを、男は掴んだ。 「赤ちゃんなんかどうでもいいから自分を助けて欲しい、そう思ったら『やめて』と言えよ」 「そんなことは言わないから関係ないよ!!おじさんはゆっくりできない人だよ!!!」 怒りの顔を固定し、さあやってみろと言わんばかりの親まりさを持ち上げ、アルコールランプの上にかざす。 まだ火に触れていないが、火の出す熱に早くも親まりさが苦痛に顔をゆがめる。 「ゆぎゅあっ・・!!!あぢゅい・・・!!でも、まりさはおかあさんだもん!!ゆっくりできるよ・・!!」 「まりさ!!頑張って!!れいむ達のあかちゃんを守ってあげて!!!」 火にも触れていないのに、随分強気じゃないか。 男はにやりと笑い、ゆっくりと親まりさの底部を火に当てた。 「ゆ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!いだい゙!!!!いだい゙い゙い゙い゙い゙!!!!いだいよ゙お゙お゙お゙お゙!!!!」 「ままままままっまままりさああああ!!!!ま゙りざをいじめな゙い゙でえ゙え゙え゙え゙!!!!」 視点の定まらない瞳からは大粒の涙がこぼれ、大きく開いた口からはヨダレがとめどなく溢れる。 親まりさを掴んでいる手には、汗なのか体液なのか、気持ち悪い粘着質のある液体が垂れ始めていた。 「ゆ゙ぎ゙え゙え゙え゙え゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!ゆ゙っぐぢでぎな゙いよ゙お゙お゙お゙!!!!」 「ゆっくりしたかったら一言、『やめて』と言えばいいんじゃないかな」 耐え難い苦痛。しかしそれを言ってしまえば赤ちゃんは殺されてしまう。 親まりさは必死に口を閉ざした。 「ん゙ん゙ん゙ん゙ん゙ん゙ん゙!!!!ぼお゙お゙ぁ゙あ゙あああああん゙ん゙!!!!」 親の叫びは赤ゆっくり達に、人間への恐怖を刷り込ませる。 どうにもできない力の差、そして自分達の無力さに耐え切れず、1匹残らずケージの隅で震えていた。 「ま゙り゙ざあ゙あ゙!!!」 もう何もかける言葉がないのか、名前だけを呼び続ける親れいむ。 焦げた皮の臭いが部屋を包み込む。 「おい、あいつが呼んでるぞ。返事してやったらどうだ?」 と、男が親まりさに目を移す。 親まりさは白目をむき泡を吹きながら気絶していた。 「なんだ、もうダウンか。やっぱ焼くのには弱いな」 その後もじっくりと底部を焼き、ゆっくりの常軌を逸した回復力でも戻らないよう、入念に焼き続ける。 こうすればこいつは一生動くことができなくなる。 男は今までも、里で見かけたゆっくり魔理沙を捕獲し、同様の処置をして自然に放っていた。 おそらく、1匹も生き残ってはいないだろう。 10分間焼き続けた親まりさの底部は、ものの見事に消し炭になっていた。 触ってみると、硬く、とてもさっきまでやわらかい皮があったとは信じられないほどだ。 普段見かけるポーズ、底部を下にした状態で床においてみると、そんな消し炭があるとは信じられないほど綺麗な体であった。 「うまく焼けたな。ま、交尾くらいはできるかもよ、れいむちゃん♪」 焼いてる最中、ずっと親まりさの名前を叫んでいた親れいむは怒るでもなく、泣くでもない不思議な顔をしていた。 「まりさが・・・まりさのあしが・・・・・まりさの綺麗なあしが・・・・」 一度も跳ねっこで勝てたことはなかった。 人間相手でも負けることないスピードで動いていたまりさ。 やわらかくて、あたたかくて、きれいな足をしていたまりさ。 そんなまりさの足が、今はもう真っ黒になってしまった。 「ちがうよ!まりさはすぐに治るよ!!れいむよりずっと跳ねるのが上手なんだよ!!おじさんは嘘をつかないでね!!!」 汚い汁を口から撒き散らしながら叫ぶ親れいむ。 男は気絶している親まりさを掴み、底部を水槽に押し付けた。 「へえ、これが治るんだ!すごいね!!こんな真っ黒でコゲだらけなのに!!もうゆっくりできないよね!!!」 押し付けられた足。 足だったもの。 「どぼじで・・・!!!どうじでごんなごどずるのおおおお!!!!!」 前かがみになって崩れ落ちる親れいむに、男は一言こともなげに告げる。 「最初に言ったよね。まりさがクズだからって」 「まりざはぐずじゃない!!!まりざはゆっぐりできるよおおおお!!!!」 男は水槽に親まりさを投げ込んだ。 ぐったりとする親まりさに涙で溢れた親れいむが頬擦りを始める。 気絶していた赤れいむを元の霊夢種用牢獄に投げ込み、男は部屋を後にした。 「まりざああ・・・・」 部屋にはいつまでも親れいむの泣き声が響いた。 2日後。 男がゆっくり収容部屋を訪れると、さっそく罵詈雑言が始まった。 しかし男は冷静で、全く言葉に反応しない。 そのまま水槽の前に座り、親まりさを観察する。 「どうだ?綺麗な足は治ったか?」 「・・・・ッ!」 歯をギリギリ鳴らせ、男を睨み付ける親まりさ。 言いことは山ほどあるだろうに、そんなことを吐き出しても無駄だと分かっているのか何も喋らない。 代わりに親れいむが口を挟む。 「ゆ゙っ!!!れいむは怒ってるよ!!!ゆっくりできないおじさんはゆっくり死んでね!!」 男はそんな親れいむも無視して親まりさをつまむ。 必死に体当たりをして親まりさを守ろうとする親れいむだが、男相手ではただのマッサージにしかならなかった。 「お前のような害獣は、こっちの牢屋が妥当だよ」 魔理沙種用牢獄に投げ入れる。 底部が丸コゲな親まりさに着地などできるはずもなく、顔面から着地し、餡子を吐き出した。 加えて、ひっくり返ったまま戻ることもできない。 男は餡子だけふき取った。 赤まりさはその餡子を狙っていたようで、少し残念そうな顔をする。 そう、生まれてから満足にエサも食べていないのだ。 育ち盛りの赤ゆっくりには酷だろう。 「お前らにご飯があるぞ」 「ゆっ!」 「ゆっくちたべたい!!」 「ゆっくちさせて!!」 「おにいさん!ゆっくちしたいよ!」 親があれほど痛い目にあわされたというのに、赤ゆっくりは目を輝かせ始めた。 親まりさと親れいむは、どこか疑惑のまなざしで見つめている。 「じゃあご飯だよー」 まず男は、親れいむにご飯を用意した。 「ゆっ・・・!」 それは豪華な食事であった。 トマト、西瓜に大根。ハチミツがたっぷりとかかったトースト。 「まずは可愛いれいむちゃんから。さあ、お食べ」 成体とは言え、1日近い絶食はつらかっただろう。 親れいむは最初は疑っていたものの、すぐに食料の山にかぶりついた。 「次は赤ちゃんれいむね」 そういうと、男は霊夢種用の牢獄にクズ野菜を投げ込んだ。 「ゆっ!?れいむもおかあさんとおなじごはんたべたい!!」 「ゆっくちできないよ!!」 「おじさん!れいむの赤ちゃんにも同じものをゆっくりあげてね!!」 親れいむの抗議も無視し、魔理沙種用牢獄に手を伸ばす男。 つまんだのは親まりさ。 「ゆっ・・!なにをするの!ゆっくりはなしてね!!」 それをケージの外の床に置く。 「チビまりさ達にはお兄さんが1匹ずつ食べさせてあげるね!!」 男は針の無い、大きい注射器のようなものを取り出し、一匹の赤まりさをつまんだ。 「あーんしてね!」 「ゆー!」 ぱかっと口を広げる赤まりさに注射器の先端を押し込み、中身を注入する。 「ゆきゅっ!くちゃい!!!やめて!!ゆっくちできないよ!!!」 「まりさの赤ちゃんをいじめないでね!!!はやくやめてね!!!」 そんなことを言う親まりさであるが、まったく動かない。 男は親まりさが本当に動けないかを確認したかったのだ。 それと、間近で赤まりさの苦しむ顔を見せたかったというのもある。 「おかああしゃあああん!!!なんでたちゅけてくれないのおおおお!!!」 「おお、酷いお母さんだね。すぐ目の前にいるのにピクリとも動かないよ。薄情だねえ!」 「ゆぎっ!!おじさんがまりさの足をこんなにしちゃったから動けないんだよ!!はやくやめてね!!!」 もちろん、男がやめるわけなどなかった。 注射器の中身は生ゴミをミキサーにかけたもの。 半分腐ったようなものを使っているので、きっと凄く臭くて不味いだろう。 注射器一本分を流し込むと、吐き出そうとする赤まりさの口を指で閉じ、上下に激しくゆする。 「ん゙ん゙ん゙ん゙!!!」 20秒ほどゆすると、口内から生ゴミジュースは消えていた。 ちゃんと体の奥まで入っていったようだ。 「んぎょおおおああああ!!!くちゃいよ!!くちゃいいいい!!!きもちわるいよおおお!!!」 なんとか吐こうとするものの、もともと食べたものを戻すような構造になっていないためか、全く戻ってこない。 「次はどのまりさがご飯かな?」 一斉に逃げ出す赤まりさ達だが、所詮は狭いケージの中。 あっという間に男に捕まった。 「ゆきゅ!やめて!くちゃいのはいらないよ!!」 「あかあちゃんんん!たちゅけてえええ!!!!!!」 水槽では必死に無駄な体当たりをしている親れいむ。 男の隣では必死に顔を膨らませて威嚇する親まりさ。 無力であった。 「やっ!!!くちゃいのやああああ!!!!」 2匹目の赤まりさに生ゴミジュースが注ぎこまれる。 さきほどと同じように注入を終えると口を閉じ、20秒ほどシェイクする。 「ゆ・・・くち・・・!くちゃいいいい!きもちわるいよぉおおおお!!!」 その後も男の手は休まることなく、5匹全部の口に生ゴミジュースは注ぎ込まれた。 男は罵倒を続ける親まりさをつまみ、ケージの中に投げ込んだ。 「お前にメシはない。ゆっくり餓死しろ」 「ゆぐ・・・ッ!」 「ああ、腹が減ったら目の前の赤ちゃんでも食えよ。お前らの仲間はいつもやってることだしな、お兄さんは止めないよ」 それを聞き、親まりさから離れる赤まりさ達。 親まりさが動けないとはいえ、ヘタに近くにいると倒れる要領で潰されてしまうかもしれない。そう思ったのだ。 「ゆっ!?大丈夫だよ!お母さんはまりさ達のことを食べないよ!!」 「動けないしな。食べたかったらいつでも言ってくれ。お兄さんが赤ちゃんまりさを潰して食べさせてあげるから」 「うるさいよ!!ゆっくりできないおじさんはゆっくり死ね!!はやくここから出してね!!!」 男はそんな親まりさの言葉など聞いてもいなかった。 視線はすでに別の場所、赤れいむが入った霊夢種用牢獄に移っていた。 赤れいむ達は生ゴミジュースよりはマシだと思ったのだろう、クズ野菜を必死で貪っていた。 クズ野菜といえども、野生のゆっくりが食べるエサ、ムカデやダンゴムシに比べればよほどおいしいはずだ。 その姿に満足すると男は部屋を後にした。 続く このSSに感想を付ける